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引退後、月収15万で地獄を見た陸上選手の話「人生で初めて『明日が怖い』と思った日」

「スプリントコーチ」というジャンルを築き、サッカー日本代表選手、プロ野球選手など多くのトップアスリートに“理論に基づいた確かな走り”を提供する秋本真吾さん。その指導メソッドがスポーツ界で注目を浴び始めている一方で、最近はフォロワー2万人を数えるツイッターのほか、「note」を使って自身の価値観を発信。「夢は叶いません」「陸上の走り方は怪我をする」「強豪校に行けば強くなれるのか?」など強いメッセージを届けている。

秋本真吾さんが引退後に経験した月収15万の生活とは【写真:@moto_graphys】
秋本真吾さんが引退後に経験した月収15万の生活とは【写真:@moto_graphys】

連載「秋本真吾の本音note」、今回のテーマは「学生アスリートと『働く』」

「スプリントコーチ」というジャンルを築き、サッカー日本代表選手、プロ野球選手など多くのトップアスリートに“理論に基づいた確かな走り”を提供する秋本真吾さん。その指導メソッドがスポーツ界で注目を浴び始めている一方で、最近はフォロワー2万人を数えるツイッターのほか、「note」を使って自身の価値観を発信。「夢は叶いません」「陸上の走り方は怪我をする」「強豪校に行けば強くなれるのか?」など強いメッセージを届けている。

 そんな秋本さんが「THE ANSWER」でメッセージを発信する新連載を始動。秋本さんの価値観に迫るインタビューを随時掲載する。最初のテーマは「学生アスリートと『働く』」。現役時代は400メートルハードルの選手としてオリンピック強化指定選手にも選出され、特殊種目200メートルハードルのアジア最高記録などの実績を残し、引退後は企業勤務を経験、現在は「走りの指導」をビジネス展開する秋本さんと4回に渡って考える。第2回は「僕が引退後、社会を知らずに見た地獄」について――。

(聞き手=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

 ◇ ◇ ◇

――秋本さんは引退後にした仕事で、大変な苦労をされたそうですね。実際にどんな経験だったのか、聞かせてください。

「僕は30歳で引退すると決めていて、実際に12年6月に引退した後は人に走り方を教えることをビジネスにしたいと思っていました。でも、お金にするビジネスのノウハウは持っていないので、実際に現役を退いた後は競技をする中で知り合った人で力になってもらえそうな人の名刺を探して連絡することから始め、当時住んでいたつくばから都内に毎日通って実際に会い、いろんな人にセカンドキャリアの相談をしていました。

 その中で知り合った人に『いい仕事があるよ』と言われたんです。東京都のある区が小中学校にいろんな競技のトップアスリートを派遣し、運動能力を向上させるという事業でした。陸上で足を速くするという仕事を任せてもらうことになり、小学校2校、中学校2校に通う日々が始まりました。多い時に月70万円くらいを稼げるようになりました。これはスポンサーがついていた現役時代よりも多い額です」

――セカンドキャリアのスタートとしては恵まれていますね。

「自分のやりたい走りの指導もできているのでやりがいがあったのですが、仕事を紹介してくれた人が今度は『もっと活動の幅を広げてみたら?』と会社を紹介してくれました。そこで新しく大学生の就職支援を始め、特に体育会学生を人材紹介会社に斡旋する事業をするので、一緒にやりませんかと。その会社が体育会学生を集め、人材紹介会社に登録してもらい、実際に内定したら会社にフィーが入ってくる仕組みです。

 加えて『秋本さんが持っている速く走るメソッドをフックにして全国のいろんな大学、部活、選手に教え、会社はそれで体育会学生にアプローチしたい』と言うので、すごくいい話と思い、業務委託をすることになりました。『契約をする』と言われ、なんだか契約ってすごいなと思っていたのですが、実際に契約書を見たら報酬は月15万円と書かれていました」

――15万円だけですか……。

「最初に紹介してもらった渋谷区の仕事も翌年3月で終わることが決まっていたので、30万円は欲しいと思ったのですが、『そこは成果報酬にしましょう。成績を残せたら30万円くらいまでは保証します』と。それで同意したら、会社の方から『秋本さん。明日、新宿で就活セミナーがあるので、そこから出てくる学生を出待ちして営業します』と言われました」

――出待ちで営業、ですか?

「僕も『えっ?』と思って翌日、社員の方と一緒に行ったら、会社の支援内容と協力アスリートの顔が載っている1枚の紙と渡され、就職セミナーをやっているビルから出てくる体育会学生に声をかけて説明して、住所、氏名、電話番号をもらって登録してもらってくださいと。『何、この仕事?』と思ったのですが、社員の方が『手本を見せます』と言い、実際に声をかけて巧みなプレゼンで目の前で2人登録してもらいました」

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