「バスケを知る」が世界への第一歩 “後進国”日本が学ぶべき、欧州名門の育成論
局面の変わる“生き物”に対応するため「自分たちで判断する力をつける」
展開によってやるべきことが変わる。試合はいわば“生き物”。事前のスカウティングから導き出された最適解に加え、相手が施した作戦に対する瞬時の対応が必要となる。これはコートサイドにいる監督からの指示ではなく、一つ一つのプレーに対峙した選手に求められる力。今回、劣勢に立たされた日本は、試合中に困難を跳ね返すことができなかった。
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レアル・マドリードの育成年代では、練習や試合で直面した課題を自分で解決させるように、コーチが導いていくという。子供が失敗したプレーに対し、コーチが「Why?」と投げかける。育まれるのは、頭を使い、自分で局面を打破する力。なぜ、このような指導スタイルなのか。ジージャ氏は言う。
「選手たちに解決策を見つけさせることを大事にしている。それはなぜかというと、ゲームごとに何をしなければいけないか変わってくる。どうやって解決策を見つけていくかを教えて、それを自分の中で適応させていく。考え方を教え、身につけた力をどう使うかは選手次第。試合ごとでも違うし、選手が抱えている課題もそれぞれ違う」
言われたことは真面目かつ着実にこなすが、応用力に長けているとは言えない日本人。教えられた技術を生かすのも、殺すのも選手次第だ。バスケ教室には、学校の部活動や社会人チームのコーチなどが参加。同クラブのメソッドを手にした指導者に、ジージャ氏が求めるのは「取捨選択」だった。
「凄く大事なのは、メソッドを受けとった時にどれが使えるもので、どれが使えないものか選ぶこと。選んだものを、また組み合わせること。実際に選んだものを見て、どこを変えたらいいのかを見ていくこと。メソッドを受け入れるのもいいけど、どれをどういうふうに日本に適応させていくのか。これはどこの国でもやるべきことです。
私たちは(日本での教室で)スキルを教えるのではなく、考え方、プロセスを教えている。コーチも教える時に考える。同じバスケットボールを教えていても、どんどん考え方を変えていかないといけない。ただし、それには時間がかかります」
日本のバスケットボールが世界と対等に戦えるまで、どれくらいの時間がかかるのか。一朝一夕ではいかない。今回のW杯で悔しさを味わったのは、選手もファンも同じ。日本の指導者たちも考え抜き、日本バスケ界全体が一枚岩で世界と戦っていく必要があるのかもしれない。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)