楢崎智亜、日本人初Vで奪った五輪切符 23歳で競技の「顔」となった兄の覚悟
「トモアスキップ」は世界の流行り、兄弟での五輪出場へ「明智を鍛え上げる」
2016年8月にクライミングが東京五輪新種目に採用された当時。20歳の若武者はボルダリングで日本人初のW杯シーズン総合優勝を飾ると、世界選手権(パリ)でも金メダルを獲得した。一躍「東京五輪の星」として脚光を浴びた日本のエース。若くして競技の顔となり、クライミング界の期待を一手に担う存在となった。
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小学5年から本格的に始めたクライミング。23歳となった今では、身長170センチと小柄ながら抜群の身体能力でダイナミックに壁を登り、海外では「ニンジャ」と呼ばれるスタークライマーになった。スピードでは、スタート直後のホールド(突起物)を使わずに直線的に登る独自のスタイルで世界を席巻。「トモアスキップ」と称され、海外選手たちが「俺もやったよ!」と声を上げるほどの“流行り”を生み出してきた。
今季もボルダリングで年間王者に輝くと、13日には金メダルを獲得。ともに3年ぶりの栄冠でエースの存在感を発揮した。3学年下の弟・明智は総合5位。兄弟での東京五輪出場の夢をかなえるには、2枠の五輪切符のうち今大会で1枠を死守するのが絶対条件だった。
栃木・宇都宮市出身で、実家には幼い頃に壊れたっ切りテレビがない。五輪という世界的祭典の盛り上がりもイメージが沸かないかもしれないが「金メダルが目標なので、それに向けてどの種目でも1位、1位、1位を狙えるようにしたい」と1年後の世界一を真っすぐを見据えている。
東京五輪は残り1枠。「明智が入ってくる可能性は十分ある。今は僕が先に決まったので、ここから僕が明智をしっかり鍛え上げて2人で出たい。『待ってるぞ』と言いたい」。兄弟、なんでも言い合える仲間、そして最大のライバル。楢崎兄弟の固い絆を結び、これからも2人で五輪への壁を登っていく。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)