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「凡人が天才を討つ」 クライミング藤井快、若手中心の世界に待ったをかける経験値

東京五輪新種目のスポーツクライミング世界選手権(東京・エスフォルタアリーナ八王子)が11日から開幕し、盛り上がりを見せている。五輪代表は男女各2枠ずつあり、今大会7位以内の日本人最上位者が内定する。2016年からボルダリング・ジャパンカップで3連覇した藤井快(こころ・TEAM au)は、若手の台頭が著しい競技を経験値で戦い抜く。

2016年からボルダリング・ジャパンカップで3連覇した藤井快【写真:松橋晶子】
2016年からボルダリング・ジャパンカップで3連覇した藤井快【写真:松橋晶子】

東京五輪代表を懸け、スポーツクライミング世界選手権が11日開幕

 東京五輪新種目のスポーツクライミング世界選手権(東京・エスフォルタアリーナ八王子)が11日から開幕し、盛り上がりを見せている。五輪代表は男女各2枠ずつあり、今大会7位以内の日本人最上位者が内定する。2016年からボルダリング・ジャパンカップで3連覇した藤井快(こころ・TEAM au)は、若手の台頭が著しい競技を経験値で戦い抜く。壁を登ることに「使命感や義務は感じていない。好きで楽しくて登っている」と語る26歳の胸の内に迫った。

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 風に身を任せるように自然と競技を始めた。藤井とクライミングの出会いは、静岡・浜松日体中に入った直後だった。テニス部に興味を持って入学したが、校内の大きな壁がたまたま目についた。中学校では珍しい光景。好奇心を掻き立てられた12歳の少年は、試しに登ってみた。

「最初は全然登れなかった。でも、全然登れないことがちょっと面白いなって。できないからこそ、これ面白いなと思いましたね。身一つでやるものですし、相手がいるわけでもないし、道具を使うのってそんなに得意じゃなかったので。自分の身一つでできないというのは悔しいし、面白いなって素直に思ったのがきっかけだなと思います」

 足も速くない。長距離も苦手。球技も得意ではなかった。スポーツ万能とは胸を張って言えなかったが、「壁」との唐突な出会いが少年を今の五輪への道に連れてきた。「僕はやりたくて始めたというわけじゃない。最初は楽しめたらいいなというくらい。まず(クライミングの)存在を知らなかったので、今思えばあの選択が今の状況を生んでいる。かなり紙一重というか、奇跡的なものだなと思います」と運命の瞬間を振り返る。

 あれから14年が経った。その間に世界的祭典の追加種目に採用され、26歳の藤井は母国開催の夢舞台が手に届くところまで来た。持ち味は安定感。どんな壁でも冷静に対処できる。しかし、本人は「凄く安定しているねと言われるけど、それだけでは今はもう物足りない」と頭を悩ませている。周りを見渡せば「代表候補」と呼ばれるライバルたちは20代前半の選手ばかり。競技が盛んになるにつれ、若手の突出した存在が目立つようになってきた。

「僕は正直、楢崎兄弟(智亜、明智)みたいに天性的な動きもできないし、原田海選手みたいに凄く(石を)持てるわけでもないし、緒方良行選手みたいにパワーがあるわけでもない。彼らに比べると、何か劣っているなというのは凄く自分の中にある。天才っていろいろいると思うけど、僕はどちらかというと凡人のジャンル」

 劣等感を感じずにはいられない。それでも「凡人が天才を討つほうが面白いと思うので、大事なところはいただければいいかな」と虎視眈々と五輪切符を見据えている。劣等感の裏には確かな自信があるからだ。業界ではベテランの域にいる26歳は、経験値で違いを見せようとしている。

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