「自分で考える力を身につけて」 元バスケ日本代表が故郷・福島の子供に送る金言
バスケットボールの元日本代表・渡邉拓馬氏が21日、福島県南相馬市の前川原体育館で行われた「東北『夢』応援プログラム」の夢宣言イベントに出席し、故郷・福島の子供たちに貴重なアドバイスを送った。
渡邉拓馬氏が南相馬市の子供たちに、動画を通じてバスケットボールを指導
バスケットボールの元日本代表・渡邉拓馬氏が21日、福島県南相馬市の前川原体育館で行われた「東北『夢』応援プログラム」の夢宣言イベントに出席し、故郷・福島の子供たちに貴重なアドバイスを送った。Bリーグのアルバルク東京や日本代表チームで活躍した名シューターは「原町ミニバスケットボールスポーツ少年団」の小学2年生から6年生まで合計16人に直接指導しながら、「自分で考える力」を持つ大切さを伝えた。
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地元のヒーローと過ごす楽しい時間に、子供たちの目が輝きを増した。身長188センチ、足のサイズは32センチと圧倒的な体格を誇る渡邉氏の登場に、最初は驚き隠せなかった子供たち。だが、穏やかな笑顔を浮かべた渡邉氏が「僕も福島出身。これまでたくさん経験したことや感じた想いを、みんなに伝えたいと思います」とソフトな口調で語りかけると、徐々に緊張もほぐれたようだ。
「みんなに意識してほしいのは、自分で考えるということ。こちらから多く指示はしません。この練習は何のためにやっているのか、どういうプレーにつながるのか、どういう場面で生きてくるのかを考えてみましょう。自分で考える力を身につけてください。そうすれば、叶えたい夢ができた時、壁を乗り越える方法を自分で見つけることができます」
南相馬市は東日本大震災で大きな被害を受けた地域でもある。「原町ミニバスケットボールスポーツ少年団」の丸山コーチは「特に原町は被害の大きかった場所です。震災後には避難した子供たちも多く、地域に子供が少ない時期が続きました。2年経ち、3年経ち、徐々に活気が戻り、今に至ります。子供たちにはバスケットボールを通じて競い合う気持ち、負けない気持ちを学び、そして感謝の気持ちを忘れずに励んでもらいたいです」と話す。
東北「夢」応援プログラムは、公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げた、年間を通して子供たちの夢や目標を応援するプログラムだ。「夢応援マイスター」を務めるアスリートや元アスリートが、参加する子供たちがそれぞれに掲げる1年後の目標に向かって、遠隔指導ツール「スマートコーチ」でサポート。1日限りのイベントで子供たちとの交流を終えるのではなく、離れた場所でも動画やSNSを通じて継続したプライベートレッスンが受けられるという画期的な試みだ。
「1回限りのクリニックではなく、子供たちの成長を感じられることが楽しみです」
初回となる今回は、子供たちが1年の目標を発表する「夢宣言イベント」だが、それぞれ目標を決める前に、まずは渡邉氏がバスケットボールの基礎と楽しさを伝えるクリニックを行った。
渡邉氏は「NBAの選手もBリーグの選手も、みんな基礎を大切にしています」と話し、二人一組となった子供たちに左右どちらの手でも片手でボールをハンドリングできるようなドリルを教えた。「両手でボールを追うよりも、片手でボールを操れる方が、より広いエリアをカバーできるよね」という渡邉氏の言葉に、子供たちは真剣な表情で耳を傾けた。
子供たちの個性と創造力が発揮されたのは、4対4の変則ゲームが行われた時だ。基本的なルールは変わらないが、いつもの試合と違うのは、どちらのゴールにシュートしてもいいこと。最初はリバウンドで取ったボールを同じゴールに向かってシュートしていたが、徐々にパスを回したり、反対ゴールに行くと見せかけてディフェンスを動かしたり、様々な創意工夫が見られた。
笑顔が弾けた楽しい時間は、あっという間に終わりを迎えた。最後に遠隔指導に参加する9人の子供たちは夢達成ノートに「わたしの将来の夢」「未来のわたしの町をどうしたい?」「1年後の約束」を書き込み、渡邉氏の前で元気に発表した。将来の夢は「バスケットボール選手」から「理学療法士」「設計士」まで多岐にわたったが、共通するのは南相馬市を「みんながバスケットボールを楽しめる町にしたい」という想いだ。
丸山コーチが「遠隔指導を通じて渡邉さんとつながっている安心感が、子供たちをどう変えてくれるか楽しみです」と話せば、渡邉氏も「1回限りのクリニックではなく、子供たちの成長を感じられることが楽しみです」と笑顔を浮かべる。渡邉氏のアドバイスと指導の下、子供たちがどんな成長を遂げるのか。渡邉氏とバスケットボール少年9人の「夢」応援プログラムがスタートした。
(THE ANSWER編集部)