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「苦手なことも、みんなの個性」 伊藤華英さんが東北の子供たちに伝えた言葉

競泳の北京五輪、ロンドン五輪代表の伊藤華英さんが30日、岩手・大船渡で行われた「東北『夢』応援プログラム」に出演。17人の子供たちに水泳の楽しさを説いた。

伊藤華英さんが「東北『夢』応援プログラム」に出演、子供たちに水泳の楽しさを説いた【写真:村上正広】
伊藤華英さんが「東北『夢』応援プログラム」に出演、子供たちに水泳の楽しさを説いた【写真:村上正広】

「東北『夢』応援プログラム」出演、大船渡の子供17人に水泳指導

 競泳の北京五輪、ロンドン五輪代表の伊藤華英さんが30日、岩手・大船渡で行われた「東北『夢』応援プログラム」に出演。17人の子供たちに水泳の楽しさを説いた。

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 今年もまた新たな「夢」がスタートした。伊藤さんが協力した「東北『夢』応援プログラム」は、公益財団法人「東日本大震災復興支援財団」が主催し、東日本大震災の被災地の子供たちにトップアスリートがスポーツを指導するもの。それを従来の1日の思い出作りに終わらせず、距離を超えてつながっていくことが、狙いにある。

 遠隔指導ツール「スマートコーチ」を駆使し、動画を通じて子供たちを1年間指導する。参加した子供たちから練習した動画が送られ、それに対し、コーチ役の「夢応援マイスター」を伊藤さんがアドバイスをつけて返信。やりとりを月1回、繰り返しながら水泳の技術向上を目指していく。伊藤さんは参加して4年目。今回は、1年間のスタートとなる「夢宣言イベント」だった。

 少し緊張した空気が漂うプールサイドに17人が整列。実際に伊藤さんが姿を見せると、子供たちは元オリンピック選手の姿に目を輝かせた。「今日から1年間が始まります。1か月ずつ、みんなが成長する姿を見ていきます。楽しくやっていきましょう」と伊藤さんが優しく声をかけると、イベントは水泳クリニックからスタートした。

 17人のレベルはさまざま。まだ25メートルを泳ぐのも難しい子供もいる。伊藤さんはまず、お手本として25メートルをクロールで泳いでみせた。子供たちは、その速さに目を奪われたが、伊藤さんが見せたかったのは、ストロークの大きさだ。25メートルを10回で泳ぎ切った。顔を上げると、こんなことを語りかけた。

「上手に泳ぐためには1回で長く進まないといけません。だから、大きなストロークを目指しましょう」。では、大きなストロークにするためには何が必要か。子供たちから「バタ足」「力強さ」「息継ぎ」と次々と声が上がり、加えて最後に伊藤さんが一番大切なこととして挙げたのが「けのび」だった。

「まずは、けのびをしっかりできるようになりましょう。肘が“お休み”しないように、しっかりとピーンと伸ばして。最初は壁を蹴った瞬間に肘が曲がり、顔が上がってしまいがち。それでは進まないので、顔をしっかりと腕と腕の間にしまってください。足の裏はしっかりと天井の方を向いているように」

「東北『夢』応援プログラム」に参加した子供たち【写真:村上正広】
「東北『夢』応援プログラム」に参加した子供たち【写真:村上正広】

子供たちに伝えた言葉「苦手なことも、一つ一つがみんなの個性」

 伊藤さんは子供1人1人の練習を見ながら、こんな風に声をかけていった。最初は水に対する抵抗感から頭が上がりやすく、かつ、しっかりとストリームラインを作ることが難しい。だから、距離が伸びにくい。そんな時に、伊藤さんは「水に体が運ばれているイメージで」との声かけでアドバイス。1回ごとに子供たちの体の力が抜け、スムーズにけのびができるようになった。

 そのほか、サイドキック、手のかき方、息継ぎと細かく練習し、その都度、伊藤さんは助言を送った。そして、90分のクリニックの最後にタイム測定。自分が上達したい泳ぎ方と距離を泳ぎ、これを基準にして1年間でタイム短縮を目指す。クリニックを終えると、舞台を会議室に移し、交流の場が設けられた。

 トークコーナーで、伊藤さんは生後6か月から水泳を始めたことを明かした。「でも、小さい頃は頑張るのは得意だけど、目立つのは好きじゃなかった。練習は好きなのに、試合で1番になるのは嫌だった」と意外にも恥ずかしがり屋だったという。そんなスタートから日本記録を樹立し、五輪に出場するまでのエピソードを惜しげもなく披露した。

 締めくくりにはこの日のメインイベント、夢宣言が行われた。子供たちが「将来の夢」などを決め、発表する。「1年後の約束」では「クロールのバタ足を頑張る」「青帽子から黒帽子になっているように」「クロールのタイムを速くする」と、それぞれが宣言。目標を設定し、1年間、努力していくことを誓った。温かく見守っていた伊藤さんは最後に、こう語りかけた。

「いつも月1回、動画で指導していくと会っていなくても会った気分になり、みんなを身近の存在に感じることができます。毎月、楽しみながらやっていきましょう。そして、私が返信するメッセージをしっかりと受け止めてください。私も一生懸命にみんなの泳ぎを見ていきます。

 それぞれ自分が苦手なこと、得意なことあると思うけど、水泳を通して、そんな部分に気づくことがあると思います。苦手なことがあるから悪いわけではなく、得意なことがあるからすごいわけでもない。一つ一つがみんなの個性。それを理解してお互い尊重できるようになっていってください」

 17人のうち11人が動画指導に参加し、1年間の挑戦が始まる。伊藤さんは大船渡について「来る度に街が綺麗になっていくことが嬉しくて感動している。1年間、みんなの街とまた成長できるように頑張りましょう」と言い、再会を約束した。

(THE ANSWER編集部)

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