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「今はご飯を食べることが怖くない」 体脂肪率に縛られ招いたケガ、30歳で辿り着いた1つの答え――バスケットボール・林咲希

取材に応じた林咲希【写真:増田美咲】
取材に応じた林咲希【写真:増田美咲】

体脂肪率ではなく筋肉量にフォーカスして考えるように

 その後、移籍等の事情からサポートを一時中断。23-24シーズンのケガをきっかけに、25年1月から新たな栄養士として、国内のトップアスリートの栄養サポートを行う日大の松本恵教授の下、栄養サポートを再開。現在に至る。

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「今はご飯を食べることが怖くない。それが、この1年に起きた一番の変化です」と林。というのも、実は栄養サポートを中断していた最中も、体脂肪率が気になると、ご飯の量を減らしていたという。

「変化のきっかけは、やはり血液検査を基に食事のアドバイスを受けたことです。以前も『体脂肪率ではなく、筋肉量で体の変化をみようね』と言われ続けていましたが、頭ではわかっていたものの、どうしても体脂肪率ばかり気になってしまった。

 でも新しい栄養士の方にも『体脂肪率よりも筋肉量を見よう』と同じく言われたこと、そして数値を見ながら『筋肉量をアップするにはどの栄養素が足りないのか?』と話し合うことで、筋肉にフォーカスして考えられるようになりました」

 近年、スポーツ界ではREDs(レッズ/Relative Energy Deficiency in Sport)というアスリートの健康状態が世界的に問題になっている。

 REDsとはスポーツによる膨大なエネルギー消費によってエネルギー不足を起こし、健康的な生活を維持できない状態を指す。性別を問わず健康に有害な影響をもたらし、パフォーマンスや免疫力の低下のほか、無月経や疲労骨折、貧血、抑うつ状態の要因になる、とIOC(国際オリンピック委員会)は警鐘を鳴らす。

 林選手の個人サポートを行う日大の松本教授は、「日本では特に“体重や体脂肪を落とせば動きや記録が速くなる”という思い込みから、『痩せたい』『体脂肪を落としたい』と考える選手が米(ご飯)の量を制限する選手が多く、エネルギー不足になりやすい」と指摘する。

「例えば陸上ではセパレートのウェアが主流だが、女性選手のなかには記録を伸ばしたいという気持ちだけでなく、『腹筋が割れている体に見せたい』と気にするあまり、試合直前にダイエットを始めたり、試合前日に絶食したりする選手もいる。

 エネルギーが不足すれば体調不良や脱水、ケガのリスクが高まり、それこそ何のために厳しい練習やトレーニングを積んできたのかわからない。部活動生も含め、アスリートたちには、競技種目に関わらずエネルギー源である主食、糖質を中心に食べてこそ、良いパフォーマンスが発揮できることを忘れないでほしい」と訴える。

 林も今は「自分の体に必要であることも理解し、1食250~300グラムは食べています」と明かす。「体を見る時のポイントを体脂肪から筋肉に変えただけで、『何かを減らす』ではなく『足りないものを補う』という視点で食事を考えるようになり、食べ方が変わりました」。正しいエネルギー補給がパフォーマンスにも好影響を与えることは、より広く周知されていくべきだろう。

■林 咲希 / Saki Hayashi

 1995年3月16日生まれ、福岡県出身。ポジションはシューティングガード(SG)。ミニバスのコーチを務めていた父親の影響で、小学2年からバスケットボールを始める。精華女子高卒業後、2014年に白鷗大に進学。SGとして起用されるようになり、3ポイントシューターとして活躍。4年時にはインカレで優勝し、大会MVPと得点王を受賞した。大学卒業後、WリーグのJXサンフラワーズ(現ENEOSサンフラワーズ)に入団。23年、富士通レッドウェーブに移籍し現在に至る。初の日本代表入りは19年。21年東京五輪では準々決勝(ベルギー戦)の試合終了間際に3ポイントシュートを決めるなど、日本バスケットボール史上初の銀メダル獲得に貢献。24年パリ五輪ではキャプテンとしてチームを率いた。コートネームは『キキ』。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。人物インタビュー、ヘルスケア、ダイエット、トレーニングの分野を軸に、雑誌、書籍等で編集・執筆を行う。担当書籍に『すごい股関節』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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