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ミラノ五輪で見た採点競技の奥深さ 得点、順位も大事だが…心揺さぶる「表現者」の矜持

長谷川帝勝、村瀬心椛、山田琉聖(左から)【写真:ロイター】
長谷川帝勝、村瀬心椛、山田琉聖(左から)【写真:ロイター】

「ジャッジは気にせず、自分のベストを」印象に残る上村愛子さんの言葉

 スノーボードは、さらに表現者の割合が強い。歴史的な背景もあって五輪ジャッジが信用されていないこともあるが、選手たちが最優先で目指すのは「自分らしさ」。そして、観客を沸かせること。審判の評価だけを考えている選手は少ないように思う。

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 男子スロープスタイル銀メダルの長谷川帝勝は「ジャッジに合わせるのも大事だけど、スノーボーダーとしてやりたい滑りを貫くのも大事」と話した。男子ハーフパイプの山田琉聖は独創的なルーティンで銅メダルを獲得し「自分のスタイルがジャッジに認められた」と言った。その言葉からは「採点は二の次」という覚悟が感じられる。

「独創性」「スタイル」などと言っても、点をつけるのはジャッジの主観。そこにフォーカスしても、うまくいくとは限らない。女子スロープスタイルの村瀬心椛は3本とも自分らしく攻めて銅メダルだった。金メダルに固執するなら、あえて難しいことをせずに完成度を高めるなど違ったアプローチもあったはず。それをしなかったのは、表現者としてのプライドなのだろう。

 モーグルのテレビ解説をしていた上村愛子さんの言葉が印象に残った。「ジャッジは気にせず、自分のベストの滑りをしてほしい」。14年ソチ大会4位。1998年長野大会から連続出場で「なんで一段一段なんだろう」と表彰台を目指したが、願いは届かなかった。それでも、自分史上最高の滑りはした。その自負があったから、最後は「得点は得点で」と点数発表も見ずに感極まって涙した。

 得点なんて、一握りの審判が決めるもの。観客や世界中の人に点数以上の感動や興奮を伝える方が、よほど価値がある。「自分を表現する」なんて字で書くと簡単だが、強い意志と想像を絶する努力がなければ無理。それをやり切る選手たちはすごいと思う。

「史上最多メダル」など、どうしても結果に目がいきがちな五輪だが、冬季は特に結果の出なかった「表現者」に心動かされることが多い。今大会のスノーボードで言えば自分の滑りを貫きながら今回もメダルに届かなかった岩渕麗楽、フィギュアスケート女子シングルのアンバー・グレンも鳥肌ものの表現力だった。

 試合を見ていると、得点は頭に入ってくるが、圧倒的な表現力は直接胸に飛び込んでくる。得点とか順位は大事だが、スポーツは決してそれだけではない。だからこそ、採点競技は奥が深いし、これほど多くの人の心を揺さぶるのだと思う。(荻島弘一)

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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