世界が乞う名将、井村雅代は何が凄いのか 「なぜ、できない」で終わらない伝える力
世界的評価が採点にもプラス?「『井村HCが見ているチーム』と審判も意識する」
選手も納得してしまう弱点を見抜く「眼力」はもちろん、それを「伝える力」も高かったという。
「できない理由をかみ砕いてかみ砕いて、わかりやすく説明して下さる。選手にとって『なんでできないんだろう』というモヤモヤはなかったです」
井村HCはイギリス代表、中国代表の指導を経て、14年から日本代表に復帰。昨年のリオデジャネイロ五輪では、チーム、デュエットともに銅メダルに導いた。名将の復帰によって、変化した部分はあるのだろうか。
「まずは選手が引き締まったと思います。もちろん、技術もですが、メンタル面もさらに鍛えられているはずです。自分たちが何を目指していかないといけないのか。その答えへ導くチームマネジメントも凄く上手な方です」
印象が左右する採点競技。世界的に評価されてきた「マサヨ・イムラ」の存在がプラスに影響する面もあるという。
「審判も『井村HCが見ているチーム』という目で見ます。過去メダルに届かなかった中国をメダル獲得に導かれたことも、もちろん指導力が一番ですが、そのような『井村HC』という存在の大きさやイメージも少なからずあったと思います」
帰ってきた名将とともに世界の頂を目指す日本。「井村のDNA」を受け継ぎ、世界に驚きを与えることはできるだろうか。
◇青木 愛(あおき・あい)
地元の名門クラブ・京都踏水会で水泳を始め、8歳から本格的にシンクロナイズドスイミングに転向。ジュニア五輪で優勝するなど頭角を現し、中学2年から井村雅代氏(現・代表HC)に師事する。20歳で世界水泳に臨む日本代表選手に初選出されたが、肩のケガにより離脱。その後も補欠に回ることが多く、「未完の大器」と称された。北京五輪代表選考会では劣勢を覆し、代表の座を獲得。欧米選手に見劣りしない恵まれた容姿はチーム演技の核とされた。引退後は、メディア出演を通じてシンクロに限らず幅広いスポーツに携わっている。
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ジ・アンサー編集部●文 text by The Answer