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元阪神・亀山つとむ氏が福島・いわきで「夢」応援 小中学生に「失敗のすすめ」

かつて阪神の外野手として活躍した亀山つとむ氏が16日、福島・いわき市で小中学生の野球少年に“守備の極意”を伝授した。元ゴールデングラブ賞、球宴2度出場と俊足好守で鳴らした亀山氏はなぜ、いわきを訪れたのか。それは「東北『夢』応援プログラム」を通じた3年にわたる“縁”があるからだ。

亀山つとむ氏は、福島・いわき市の小中学生の野球少年に“守備の極意”を伝授した【写真:村上正広】
亀山つとむ氏は、福島・いわき市の小中学生の野球少年に“守備の極意”を伝授した【写真:村上正広】

元ゴールデングローブ賞の名手が守備のコツを伝授

 かつて阪神の外野手として活躍した亀山つとむ氏が16日、福島・いわき市で小中学生の野球少年に“守備の極意”を伝授した。元ゴールデングラブ賞、球宴2度出場と俊足好守で鳴らした亀山氏はなぜ、いわきを訪れたのか。それは「東北『夢』応援プログラム」を通じた3年にわたる“縁”があるからだ。

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 公益財団法人「東日本大震災復興支援財団」は、被災地の子供たちが持つ「やりたい気持ち」や「夢」をサポートしようと「東北『夢』応援プログラム」を企画。多種多様なスポーツを対象に、スマートフォンやタブレットを通じた動画やテキストメッセージを使いながら、オンライン上で1対1の遠隔指導を継続し、子供たちが設定した目標に少しでも近付けようという画期的な取り組みを行っている。

 野球編で「夢応援マイスター」という先生役を務めるのが、現在は履正社医療スポーツ専門学校でも野球を教える亀山氏だ。2016年にスタートしたこのプログラムでは「いわきFスポーツクラブ」の野球少年を生徒に迎え、1年を一区切りにテーマを変えて指導を行ってきた。この日は昨年6月から取り組んできた「守備編」の成果発表イベントが行われ、プログラムに参加した9人が1年の集大成を披露した。

 1年ぶりに子供たちと再会した亀山氏は開口一番、「大きくなったなぁ」と感慨深げ。今年から中学生になった子供たちも多く、成長真っ盛りで少し大人になった姿に目を細めた。前日に降った大雨の影響でグラウンド状態が悪く、あいにく室内での開催となったが、それでも子供たちのやる気と亀山氏の情熱に曇りはなかった。

 この1年間のテーマは「守備」。遠隔指導では、1.グラブさばき(5か所のボールを捕球)、2.動きの中でのグラブさばき(移動しながらの捕球)、3.足の運び(捕球から目標に向かって)、4.ボールの移動(グラブの中から素速く握るまで)、5.基本動作のまとめ(捕球から送球まで)という課題に取り組んだ。「ずっとつながりながら教えてきた集大成を見せてください」と話す亀山氏を前に、最初はやや緊張の面持ちだった子供たちも、すぐに表情をほころばせ、フライ、ゴロといった球をフォアハンドやバックハンドで巧みにさばいて好プレーを披露。要所で亀山氏が送るアドバイスにも、目を輝かせながら耳を傾けた。

子供たちに「教える」のではなく「伝える」ことを意識したという亀山氏【写真:村上正広】
子供たちに「教える」のではなく「伝える」ことを意識したという亀山氏【写真:村上正広】

子供たちに「教える」のではなく「伝える」ことを意識

 成果発表に続いて、守備のクリニックを開講。ここでは捕球したボールを自分の右側に投げるための練習を行い、捕球後に右足を後ろに引いて体勢を整えるパターンと、捕球後に反時計回りに身体を回転させて体勢を整えるパターンを伝授した。これまでは捕球した位置から前方に向かって送球してきたが、今回は捕球位置からほぼ真横か後方に向かってサイドから投げる練習で、難易度は数段アップ。亀山氏は「右足をしっかり引くんだぞ」「回転して投げる時は、しっかり先に投げる方向を見るんだぞ」という技術的な指導とともに、悪戦苦闘する子供たちへこんな言葉も送った。

「これは練習なんだから、ボールがあっちこち飛んでもいいんだよ。間違ってもいいからチャレンジしてみよう。失敗しないと上手くはならないよ」

 恥ずかしからず生き生きとした表情で白球を追いかける子供たちのプレーは、回数を繰り返すごとに進歩。初めはおぼつかなかった高度な捕球と送球のテクニックも、ものの30分ほどでスムーズな動きとして身につけてしまった。

 亀山氏は子供たちを指導する時に「教える」のではなく「伝える」ことを意識するという。「ただ一方的に教えるのではなく、全員に声を掛けながら、言ったことを理解しているのかを確認するように意識しています」。子供たちの目線に合わせた確認作業を行うことで、教える側の独りよがりに終わらず、また野球上達のポイントを伝える上で新たな発見も生まれる。

 約2時間の成果発表とクリニックの最後には、子供たちが1年前に立てた目標に近づいたか、自己評価を振り返りシートに記入した。閉会式では、一人一人が“亀山先生”の前で1年を振り返り、「バッティングがよくなった」「守備のステップをもっと上手にしたい」などの感想と合わせ、5点満点で自己採点。一番多かったのが「3点」で、中には「2点」という辛口の自己評価も。これには亀山氏も「もっと自分を褒めていいんだぞ」と苦笑いだった。

 受講者には1年間の修了証と合わせて、亀山氏から限定100枚のサイン入りベースボールカードを授与。中学生の江幡海澄くんは「遠隔指導の課題だった足の運びが難しかったけど、家でお父さんと練習しました。今日、亀山先生に教えてもらって、疑問に思っていたことが解決されました」と笑顔を見せた。

亀山氏は「失敗を恐れずに練習し続けて下さい」と子どもたちに伝えた【写真:村上正広】
亀山氏は「失敗を恐れずに練習し続けて下さい」と子どもたちに伝えた【写真:村上正広】

「高い目標を持って、失敗を恐れずに練習し続けて下さい」

 今回で野球編は一区切りを迎えたが、亀山氏はこんなエールを送った。

「守備のアドバイスを求められたら、専門学校の生徒にも、プロ野球選手にも、みんなに伝えたことと同じ、基本をしっかりやるように言います。みんなには、プロ野球選手と同じことを伝えたんだよ。しっかり足を動かしてステップする。取ったら投げる。全ての動きがつながるように練習して下さい。

 同じ東北の岩手・花巻東高校からは菊池雄星投手と大谷翔平投手の二人がアメリカで活躍しています。すごいことだよね。でも、みんなも同じように活躍できるようになるかもしれない。高い目標を持って、失敗を恐れずに練習し続けて下さい。メジャーリーガーになっても取材拒否しないでね(笑)」

 関西人らしく、ジョークで締めた亀山氏。真剣さの中にも笑いを交えた指導を受けた日々は、子供たちの心の中に大切な思い出として、いつまでも色褪せることなく輝き続けることだろう。

(THE ANSWER編集部)

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