「鼻をへし折られた」衝撃の大敗 川口能活がコパ・アメリカに忘れ得ぬ“南米の洗礼”
味わった現役人生最大の大敗「本当の意味で何もできず圧倒された」
「ナイターだったこともあって、スタジアムは異様な雰囲気に包まれていました。威圧感や迫力が何倍にも増して、試合前から圧倒されてしまいました。中立国で開催されるW杯とは異なり、彼らにとってはホームゲームなんです。『アジアからやってきた日本には絶対に負けられない』という強烈なモチベーションがピッチ上の選手だけでなくスタンドからも感じられました。
いざ試合が始まってからも、W杯前に対戦したパラグアイとはまったく別物でした。プレッシャーが速く、圧力が凄い。もともと鋼のような物凄いフィジカルを持っている彼らが気迫というオーラを身にまとっていました。日本は局面でのバトルで太刀打ちできず、シュート場面でもゴールを決めようと執念が凄まじい。スマートにプレーするのではなく、すべてにおいて闘志むき出しでファイトする相手選手から殺気すら感じるほどでした」
結果は0-4の惨敗。積み上げてきたはずの自信は、脆くも崩れ去った。国際Aマッチ通算116試合に出場した経験を持つ川口氏は「あのパラグアイ戦は忘れられない」と唇を噛んだ。
「本当の意味で何もできず圧倒されました。現役時代で最もタフなゲーム、相手に圧倒されたゲームは? と問われたら、コパ・アメリカでのパラグアイ戦と答えます。それ以前も以後も大敗した経験はありますが、そういった試合でも多少なりとも対抗できたという手応えや意地を見せてきた自負があります。でもパラグアイ戦は手も足も出ませんでした。それこそカルチャーショックを受けるような敗戦でした」
ペルーとパラグアイに連敗した日本は第3戦のボリビア戦を1-1で引き分けたものの、南米の高く厚い壁に阻まれて帰路に就いた。南米諸国がホームのアドバンテージを最大限生かし、日本にとって完全アウェーの戦いは生易しいものではなかった。
ただし、当時の日本代表が過渡期にあった点を記さないわけにはいかない。