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9年前、死と1cmの境界線 平野歩夢の言葉「生きててよかった」に透けた重み…苦渋の選択が救った命

ミラノ・コルティナ五輪のスノーボード男子ハーフパイプ決勝が13日(日本時間14日)に行われ、平野歩夢(TOKIOインカラミ)は演技後に実感を込めた。大会1か月前の複数箇所の骨折に耐えながら、86.50点で7位入賞。テレビインタビューで「生きててよかった」と言った。

スノーボード男子ハーフパイプに出場した平野歩夢【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
スノーボード男子ハーフパイプに出場した平野歩夢【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

スノーボード男子ハーフパイプ決勝

 ミラノ・コルティナ五輪のスノーボード男子ハーフパイプ決勝が13日(日本時間14日)に行われ、平野歩夢(TOKIOインカラミ)は演技後に実感を込めた。大会1か月前の複数箇所の骨折に耐えながら、86.50点で7位入賞。テレビインタビューで「生きててよかった」と言った。

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 もしかすれば、競技をあまり深く知らない人からすれば、大げさに聞こえるかもしれない。ただ、平野の言葉には重みがあった。

 9年前――。平野は死と1センチの距離にいた。

 それは18年平昌五輪の1年前、17年3月のUSオープンだった。当時18歳の平野は4回転技の着地で転倒。体は氷のように硬い壁へ叩きつけられた。

 ハーフパイプの壁は、ふわりと受け止めてくれる雪ではない。重機で圧縮され、削られ、固められた氷壁だ。

 あまりの強い衝撃に血の気はどんどん引いていく。顔は青ざめていった。ただ負けず嫌いの小さな体からあふれ出るアドレナリンは、激痛を吹き飛ばす。気が付けば、自然と「もう1本滑る」と口にしていた。

 周囲は必死に棄権を促す。それでも平野は「もう1本」と譲らない。危険なのは明白だったが、闘争本能でなかなか首を縦にふれなかった。ただ周囲の鬼気迫る説得、最終的には父・英功さんにさとされ、ギリギリでうなずいた。棄権を選んだ。

 結果的に、この苦渋だった選択が文字通り命を救った。

 すぐに試合会場から救急搬送された。運ばれた先は集中治療室だった。

 手術が終わると、医師から衝撃の事実を告げられた。

「1センチずれていたら死んでいたよ」

 というのも肝臓は破裂し、膜1枚でつながっていた。もし、あの「もう1本」を強行していたら…。、体内で大出血を起こしていた可能性は高かった。

 まさに命の境界線だった。

 この時に負傷した左膝が完治した後は、恐怖心を乗り越え、平昌五輪では14年ソチ大会に続く2大会連続銀メダルを獲得した。ひたすらに勝つ姿をイメージし、地道にできることに徹した。

 その後、21年東京五輪ではスケートボードのパークに出場し、新たな道を切り開いた。22年北京五輪は金メダルを獲得し、世界王者となった。当時、決勝2本目に五輪史上初の「フロントサイド・トリプルコーク1440」を成功させたが、まさかの2位。それでも3本目で完成度を上げ、ジャッジの評価を覆し、頂点に立った。

 常に自分を高め、平野にしか見えない景色の中で生きている。夏も合わせて5大会目のオリンピック。やっぱり平野歩夢は強かった。

(THE ANSWER編集部・上田 悠太 / Yuta Ueda)

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