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日本の「お茶当番」と何が違う? 米国の運動部を支える“保護者の負担”の実情

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回のテーマは「米国運動部の保護者のサポート」。最近、日本では指導者の食事、飲み物の世話をしなければならない「お茶当番」といった保護者の負担が問題になっているが、米国の実情はどうなっているのか。実際に米国で子育てをしている谷口氏がレポートする。

運動部の“保護者負担”問題、米国の実情とは
運動部の“保護者負担”問題、米国の実情とは

連載「Sports From USA」―運動部の“保護者負担”問題「負担は大きいけど『当番』はない」

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回のテーマは「米国運動部の保護者のサポート」。最近、日本では指導者の食事、飲み物の世話をしなければならない「お茶当番」といった保護者の負担が問題になっているが、米国の実情はどうなっているのか。実際に米国で子育てをしている谷口氏がレポートする。

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 負担はあるけど「当番」はない。

 日本の子どものスポーツは、お茶当番や雑用など、保護者の負担が大きいと伝え聞く。米国でも、子どもがスポーツやその他の活動をするためには、保護者のサポートが不可欠だ。

 米国で小学生や中学生が学校外でスポーツをする場合は、送迎の負担と費用が重くのしかかる。

 米国は車社会。ごく一部の都市を除いては、車がないと生活できない。それに、安全のために、子どもだけで行動させないことが社会の常識になっている。日々の練習から試合まで保護者が車で子どもを送迎しなければいけない。試合は同じレベル同士のチームで競わせることが多いので、対戦相手は隣町のチームとは限らず、50キロ、100キロ離れた街まで出かけることも珍しくない。

 そうはいっても、多くの家庭が共働きで、夕方の練習開始時間に間に合うように送迎するのは難しい。専業主婦や主夫でも、家庭に子どもが2人、3人いれば、同時刻に2人の子どもを別々の練習場所に送迎することは物理的に不可能。そんな時には「カープール」といって、他の子どもも自分の車に乗せたり、自分の子どもを他の保護者の車に乗せてもらったりして、練習や試合に出向く。子どものチームメートの保護者と顔見知りになると、「どのへんに住んでいるか」、「都合がつかない時にはカープールを頼めるか」などを、それとなく聞いてみて、いざという時には乗り合わせをお願いしたり、お願いされたりする関係を作っておく。関係を作れない場合でも、一斉メールでチーム全員に向けて「○日の練習後、家まで送ってくれる方、いらっしゃいませんか」とSOSを発信すれば、たいていは誰かが手を差し伸べてくれる。

 万が一、事故が発生したら誰の責任になるのか。運転手の責任であるし、乗り合わせを頼んだ保護者は自分を責めるだろうが、保護者間では、書類をやりとりすることもなく、全く日常的なこととしてカープールは行われている。そうしないと練習や試合ができず、スポーツ活動そのものができないからだ。

 学校の運動部に入ると、送迎の負担はやや軽減される。これも学校や地域、種目によって違いはあるだろうが、練習は学校で行うことが多いし、試合会場への送迎にはスクールバスを使うことができる。(私が保護者として経験したことだが、予算や他の運動部との兼ね合いで都合で、スクールバスは往路だけ、迎えは各自で、という日があった)

 だからといって、保護者の負担が全くないわけではない。ホームゲームの時には、試合の運営の多くの役割を保護者が担当している。筆者の次男が通うミシガン州の公立高校運動部では、場内アナウンス、スコア表示、売店(売り上げは運動部の活動費)の運営などがそれにあたる。私も時々、売店でホットドッグや飲み物を売っている。

 誰が、どの仕事を受け持つかの決め方が、日本の「お茶当番」と最も違うところだろう。

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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