[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

初の引退会見は日本トライアスロン新時代の証 高橋侑子の落選騒動から…透明化された代表選考

トライアスロン女子のエース、高橋侑子(34=相互物産)の現役引退会見が11日、都内で行われた。五輪代表選手が引退に際して会見を開くことは珍しくないが、トライアスロンでは異例中の異例。トライアスロンジャパン(旧日本トライアスロン連合=JTU)が初めて選手の引退会見を主催した裏には、高橋への深い思いがあった。

引退会見を行ったトライアスロンの高橋侑子【写真:編集部】
引退会見を行ったトライアスロンの高橋侑子【写真:編集部】

トライアスロン女子のエース、高橋侑子の引退会見の裏であったこと

 トライアスロン女子のエース、高橋侑子(34=相互物産)の現役引退会見が11日、都内で行われた。五輪代表選手が引退に際して会見を開くことは珍しくないが、トライアスロンでは異例中の異例。トライアスロンジャパン(旧日本トライアスロン連合=JTU)が初めて選手の引退会見を主催した裏には、高橋への深い思いがあった。

【注目】日本最速ランナーが持つ「食」の意識 知識を得たからわかる、脂分摂取は「ストレスにならない」――陸上中長距離・田中希実選手(W-ANS ACADEMYへ)

 トライアスロンでは見慣れない光景だった。東京・新宿区にあるジャパン・オリンピック・スクエアの会議室、スポンサーボードの前に高橋が座った。冒頭でトライアスロンジャパンの大塚眞一郎専務理事がプロフィールを紹介し、会見後には競技シーンのスライドショーを上映。最後には記念品としてレース写真のパネルも贈られた。

 女子で五輪3大会連続出場の上田藍や男子で日本選手権11回優勝の田山寛豪ら過去にもレジェンドはいたが「トライアスロンに引退はない」と一線を離れる時も会見はしなかった。しかし、今回は「もうトライアスロンのレースには出ない」という高橋の労をねぎらう手厚い会見。長くトライアスロン界を牽引してきた高橋への「感謝」とともに「贖罪」という言葉も頭をよぎった。

 騒動が起きたのは16年リオデジャネイロ五輪前だった。代表選考が最後までもつれ、有力視されていた高橋は落選した。もちろん、JTU(当時)の選考が公平でなかったわけではないだろうが、高橋が有力クラブに所属していなかったことで物議をかもした。

 高橋の関係者や応援する人たちは「クラブの力で代表が決まるのか」と激怒した。JTU側の説明は分かるものの、選考基準が完全でなかったことも事実。メダル有力競技でもないため社会的な騒動にこそならなかったが、トライアスロン界にとっては激震だった。

 最もショックを受けたのは目指していた五輪を逃し、周囲の期待を裏切った形になった本人だったはず。それでも、高橋は不平不満を口にすることなく「東京五輪代表に選ばれるために、もっと強くなる」と言った。15歳でジュニア日本代表入りし、将来のエースとして期待されてきた逸材が、代表落選で覚悟を決めた。

1 2 3

荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
CW-X CW-X
lawsonticket
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集