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野球少女がサッカーに魅せられて 創部5年の高校で日本一になった18歳加藤ももの3年間

辛い時期は半年ほど続いたと加藤は振り返った【画像:山田智子】
辛い時期は半年ほど続いたと加藤は振り返った【画像:山田智子】

宮澤ひなたを擁してインターハイ3位に輝くも、選手権は3年連続初戦敗退

「入学当初はついて行くのに必死だった」という加藤だが、それでも1年生からレギュラーの座を獲得。2年生になると、U-16女子日本代表候補にも選出された。

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「目の前のことに一杯一杯で、(星槎の)スタメンに入ることしか考えていなかったので、ビックリし過ぎて、何も言えなかったです。『えっ、自分が!?』って。たぶん1年生の選手権で日ノ本学園と対戦したときに、負けず嫌いな性格なので、相手DFの牛島理子さん(INAC神戸レオネッサ)にとにかく負けたくないと思ってプレーしたのが評価されたのだと思います」

 その頃になると、星槎のサッカーにも慣れ、「縦に仕掛けるタイミングや受けるタイミングが合ってきて、自信がついてきました」と充実ぶりを語る。

 2年生の夏に行われた2018年全国高等学校総合体育大会サッカー競技大会(インターハイ)で、星槎国際湘南は2度目のインターハイ挑戦にして初の3位入賞。一躍全国区となったが、期待された冬の選手権では3年連続で初戦敗退を喫する。

「選手権はひなたさんと一緒にプレーできる最後の大会だったので、決勝まで行きたいなという気持ちがありました。ひなたさんを含め1学年上の先輩はタレント揃いだったので、『行けるかも』という雰囲気がチーム内にありましたが、甘く見過ぎていたなと。『ひなたさんがいるから大丈夫』と頼り過ぎていたところがあったのだと思います」

 新たなスタートを切った高校2年の冬、加藤は右足の手術を受けることになり大きく出遅れてしまう。

「焦りまくりでした。自分が出ていない間に、新高1に良い選手が入ってきて。先輩として教えないといけないんだけど……複雑でしたね。でも高いレベルで競い合おうと思い直して、後輩にも頑張ってもらって、自分も追いつけるようにという気持ちで、毎日リハビリやチームの仕事を一生懸命やりました」

 辛い時期は半年ほど続いたと振り返る。選手権の予選までは「ダメダメでしたね。FWなのに全然ゴールに向かえていませんでした」。それでも“怪我の功名”もあった。

「ケガをして、サッカーに対する意識が変わったかなと思います。自分が出ていない試合のビデオを見て、治ったらこういうプレーをしたいなとか、相手がこうやって来たらこのタイミングで剥がせるなとか、プレーのイメージ力が上がりました。ケガをしたのが右足だったので、左足の強化には良い期間だなと思って。左足をしっかり基礎から練習しました」

 迎えた高校最後の大会。初戦の相手は、前回大会で1-2で敗れた大商学園だ。

「自分たちの学年は、ずば抜けた人はいなくて、『チーム力』という目標を掲げて始動しました。選手権ではもちろん優勝を目指していましたが、そのためにはまず初戦に勝つことが重要。ずっと初戦で負けていたので、2日間くらいかけてチーム全員で話し合って『初戦突破』という目標を決めました。 私たちの学年は、誰一人として優勝という上を見ないで、初戦突破だけに向けてやれていたチームだなと思っています。練習も初戦だけに懸けてやってきました」

 1月3日兵庫県・三木総合防災公園第2陸上競技場で行われた第27回全日本高等学校女子サッカー選手権大会1回戦。星槎国際湘南は大商学園に4-1に快勝。加藤も3点目を決めて勝利に貢献した。宮澤ひなたを擁しても越えられなかった壁をチーム力で打ち破ると、そこから一気に勢いに乗った。

「初戦を突破した後、メンバーとメンバー外の選手でビデオ通話をして、初戦と同様に、上を見ずに一戦一戦戦う気持ちでやろうと『一戦突破』という目標に変えました」

 2回戦は筑陽学園に4-0。準々決勝では花咲徳栄に2-1。準決勝では東海学園附属福岡に4-0で圧勝。一戦一戦、一点一点を積み重ね、星槎国際湘南は初めて全国大会ファイナルの舞台へとたどり着いた。加藤もこの大会で5得点をマークし、大活躍を見せる。

「ケガをして気持ちが上がらない時に、色々な方から『サッカーを楽しんで』と声をかけてもらいました。『サッカーを楽しもう』を考えるようになってからは、自然と調子も上がっていきました。だから自分の個人としては、『応援してくれた人に感謝の気持ちを伝えるために戦う』ということを目標にしていました。感謝の気持ちを勝利という結果で示すことができてうれしいです」

 星槎国際湘南は平成最後の選手権で、インターハイ女王であり、6度の優勝を誇る古豪・常盤木学園を1-0で下して、初の全国制覇を達成。新しい時代の始まりを予感させた。

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山田 智子

愛知県名古屋市生まれ。公益財団法人日本サッカー協会に勤務し、2011 FIFA女子ワールドカップにも帯同。その後、フリーランスのスポーツライターに転身し、東海地方を中心に、サッカー、バスケットボール、フィギュアスケートなどを題材にしたインタビュー記事の執筆を行う。

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