野球少女がサッカーに魅せられて 創部5年の高校で日本一になった18歳加藤ももの3年間
“衝撃的なサッカー”との出会いがターニングポイントに
右足首を怪我してリハビリ中だった中学3年生の夏。加藤は松葉杖をつきながら訪れたサッカーフェスティバルで、「衝撃的なサッカー」に一瞬で心を奪われた。
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「星槎の“相手を見ながら、パスをつないでゴールに迫るサッカー”がすごく魅力的で……。そのサッカーを見た瞬間に、『怪我が治ったらこのチームに体験に行こう』と決めました」
中でもひときわ目を奪われたのは、当時1年生ながらチームの中心を担っていた宮澤ひなただ。後に破壊力のある両翼を構成することとなるスピードスターを見て、「この人と一緒にサッカーがしたい」と胸が高鳴った。親元を離れることを両親は心配したが、加藤の決意は揺らぐことはなく、「とにかく行きたいから」と説得した。
加藤が進学した「星槎国際高等学校湘南学習センター」は、スポーツを通して、生きる上で必要となる知恵や柔軟な思考力、社会性を身につけることを目的とした新しいタイプの学校だ。9つのスポーツを専攻でき、サッカー部と野球部は全国的にも強豪校として知られている。
「体育の授業で専攻している競技を行う高校で、1限から4、5限の授業に出た後、午後は体育の授業として、海外サッカーのビデオを見たり、自主練を行ったりします。16時から18時半頃までトレーニングを行い、寮生は一度戻って夕食を食べた後、19時からトップチームの練習に参加します。トータルで4、5時間くらいなので練習量としては多いですね」
サッカー部は、日本人初のプロサッカー選手である奥寺康彦氏がマイスター、元ドイツ代表のリトバルスキー氏がテクニカルアドバイザーを務め、年に数回直接指導を受ける機会もある。
特徴的なのは、神奈川県1部リーグのSEISA OSAレイア湘南FCを頂点に、高校生年代の星槎国際湘南、中学生年代のOSAレイアU-15の3世代を柄澤俊介監督が一貫で指導を行うことだ。星槎国際湘南には加藤のように外部から進学してくる選手もいるが、半数以上が下部組織であるOSAレイアU-15の出身。「私の学年は15人中10人がレイアの出身で、ボールタッチもすごく上手かった。技術的な部分で(中学の)3年間でかなり差がついているなあと感じていました」
柄澤監督のサッカーも「今までにない考え方で、衝撃的だった」と言う。加藤は「事前に分析とかをほとんどせず、常に相手を見ながらサッカーをするスタイル」にカルチャーショックを受けながらも、同時にその面白さに惹き込まれていった。
「練習はパス&コントロールが主体です。その中でファーストタッチの質。どこにでも蹴ることができる場所にボールの置くことを繰り返し言われます。ボールの軌道によってポジションを変えたり、常に相手を見てパスコースを変えたりとたくさんあり過ぎて……。最初は頭がゴチャゴチャして、何に対して怒られているのか分からない感じでした。でも2学年の先輩たちが普通にこなせているのを見て、この人たちのように上手くなりたいと刺激を受けていました」
二つの動作を同時に行うことや考えながらプレーすることに魅力を感じてサッカーを始めた加藤が星槎のスタイルにハマっていったのは必然といえるかもしれない。