ドラ1候補の隣にいた隠しダマ…無名の193cm右腕は「化けますよ」 山崎太陽に当てはまる球界の“トレンド”

スカウトが「化けますよ」と口を揃える理由…球界の傾向にピッタリ
身長193センチ、体重87キロ。さらに手足が長く、両腕を広げると2メートルを超える投手らしい体格だ。高校2年の秋に、一度だけ練習試合で投げたことがある。8回まで捕手を務め、9回からマウンドに上がったものの、いきなりの失点で「心が折れました」。今では笑い話だが、そのまま監督に「やめさせてください」と申し出たほどだ。
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ただ、真剣に投手に取り組んでみると、自身の特徴を生かせるポジションだった。「メリットしかなかったです。捕手の時は、足が長すぎて……。スローイングとかブロッキングの動きが、どうしても少し遅れてしまっていた」。欠点は見方を変えれば、プラス要素に化けた。
中学3年の時、一気に身長が伸びた。しっかり採寸したはずの高校の制服が、入学時にはすでに小さく見えたほどだった。ただ、この体格はリスクもはらんでいた。佐藤監督は大学入学当時を「今でも細いですけど、さらに10キロ近くやせてたんじゃないかな。筋力がないのに、腕が長いから振れすぎてしまっていたんでしょうね」と振り返る。爆発的なパワーに、まだ体がついていけなかった。大学で、実績を積めなかった理由もここにある。
近年、プロ野球のスカウトには一つのトレンドがある。高身長だがまだ体が細い投手の可能性を、高く評価する傾向が強まっている。ひと昔前なら、大学でリーグ戦登板にたどりつくことなく、野球人生を終えていたかもしれない選手たちだ。
そうした選手を、プロのトレーニングを与えることでパワーに耐えられる体に変え、大化けに導く手法が確立されつつある。2022年のドラフトで中日に育成1位指名され、今季はシーズン46セーブのセ・リーグ記録に並んだ松山晋也投手らが好例だ。
佐藤監督はこの現象を「プロの練習環境や食事が進化したからではないですかね。今ではアマチュアと全然違うので」と見ている。プロに送り出した投手では、石川柊太投手(ロッテ)がそんなケースだった。「ここでは成長しきれませんでしたけど、育成でいいからどこか獲ってくれと思っていました。で、体ができたらああいう投手になった。そして山崎はスケールがもう一つ上ですからね」。将来像として、ソフトバンクのエースだった斉藤和巳の名前を挙げる。
山崎自身が描く未来の姿は、ダルビッシュ有(パドレス)だ。「あれだけたくさんの変化球を投げられて、何でもストライクを取れる。さらにあの歳まで投げているのは尊敬しかないです」。大きすぎるスケールが災いして、ちょっと遅れてやってきた投手としての成長期。素質を開花させる場はどこになるのか。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
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