バレーボール界のレジェンド、キライ監督が目指すロス五輪金

「買取大吉 バレーボールネーションズリーグ2025 千葉大会」は18日、千葉ポートアリーナで第3日が行われ、米国がアルゼンチンを3-1（25-23、20-25、25-20、25-23）で下した。パリ五輪銅メダルの米国は昨年10月、28年ロサンゼルス五輪金メダル獲得を目指してカーチ・キライ監督（64）が就任。予選ラウンド通算6勝4敗とし、大会最終日の20日には日本と対戦する。

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　勝利を決める25点目が入ると、キライ監督はベンチの前で力強くガッツポーズし、選手に笑顔で声をかけた。「選手たちは素晴らしかった。いい試合だった」と喜び、相手のアルゼンチンを「日本との激しい試合（2-3）をし、わずか20時間後に素晴らしいプレーをしていた」と健闘をたたえた。

「ミスター・バレーボール」「世界最高のバレー選手」「米国バレーの至宝」……。キライ監督は、そんな異名を持つレジェンドだ。1984年ロサンゼルス五輪で米国を初の金メダルに導き、88年ソウル五輪で連覇。エースとして、キャプテンとして、発祥国ながらソ連や東欧（ともに当時）、日本に遅れていた米国を、一気に世界のトップに引き上げた。

　190センチと当時としても決して大きくはなかったが、抜群の守備力と圧倒的な攻撃力でチームを牽引した。特にスパイクは芸術的。滞空時間の長いジャンプで空中に静止し（したように見えた）、的確にコースを打ち抜いた。金髪をなびかせてコート上を駆け回る姿に、当時バレーボールがブームになっていた日本にもファンが多かった。

　もともと「二刀流」だったが、92年には本格的にビーチバレーに転向し、96年アトランタ五輪で金メダルを獲得。いまだにインドアとビーチの両種目で五輪の頂点に立った選手は、男女を通じてもキライ以外にはいない。

　指導者としてもキャリアを積み、2012年に米国女子代表の監督に就任。16年リオデジャネイロ五輪で銅メダル、21年東京五輪ではチームを初の金メダルに導いた。選手と監督で金メダルに輝くのは史上2人目（1人目は中国女子代表の郎平）。24年パリ五輪では再び決勝に進み銀メダルを手にした。

　女子で圧倒的な実績を積み、ロス五輪で王座奪回を目指す男子代表の監督に就任した。2008年北京五輪以来金メダルのない米国男子チームにとっては「切り札」的な存在。昨年10月の就任時には「私にとって新しい冒険であり、挑戦。母国を率いて母国のオリンピックで金メダルを目指せる喜びは、言葉に言い表せない」と話した。

　王座奪回を目指すロス五輪へ、キライ監督の初陣が今大会。パリ五輪後に多くの選手が代表を離れ、今大会でメンバーに入っているパリ組は3人だけ。大幅なメンバー入れ替えで予選ラウンドも苦しむが「今年はオリンピックサイクル（4年間）の1年目。まず選手を見なければならない」と開催国として予選免除のアドバンテージを得て、選手選考も慎重だ。

　エースとして1984年のロス五輪で米国に初の金メダルをもたらし、44年後の同じロス五輪で監督として米国を金メダルに導くことを周囲は期待するが「そんなに簡単なことではないよ」と笑顔。「どの国も目指しているのは金メダル。もちろん、私もだ」。3年後を見据え、キライ監督は言い切った。