赤字800億円「会社は厳しい状況」でも…日産が野球部を復活させた意味 休部経験の監督が胸張る「辞退者ゼロ」

復活チームが強豪に挑む構図は今の日産と同じ
野球部にとって、都市対抗野球や日本選手権といった全国大会に返り咲くことは変わらぬ大目標。ただ神奈川の社会人球界には、昨夏の都市対抗を制した三菱重工EastをはじめENEOS、東芝と、この世界の歴史を作ってきたチームが並ぶ。日産もかつてはその一員だったが、今はイチからのスタートだ。
伊藤監督も「実力差はあります。試合をやりながらそこを少しずつ詰めていきたい」と、現状の力関係を認める。これには経営不振の会社が置かれた状況と、つながる部分もある。
「フレッシュなメンバーが、強豪相手に戦う姿を見てほしい。全員で前に進む姿で、この会社を元気にしていきたいと思っています」
2009年の休部は、リーマンショックによる会社の経営不振が大きな理由だった。ただ当時、選手として痛みを経験した伊藤監督は、そこだけに理由を求めていない。「当時は会社と野球部が離れてしまっていた。会社や地域あっての野球部というのを腹に置いてやりたい」。チームの存在価値を感じてくれる人を1人でも増やすことが、大きなミッションだ。
経営不振が伝えられても、内定した選手からは「誰1人辞退はなかった。いい採用ができたと思っています」と指揮官。ユニホームの右胸に形どられたブルーバードは、かつての日産の看板車種の名前。同時に幸せを運ぶ鳥でもある。荒波の中を漕ぎ出した野球部が、きっと会社にも幸運を呼び込む。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)