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箱根駅伝に異変 “長距離不毛の地”沖縄ランナーが躍進、環境不利な南国で何が…変革を牽引した2人の存在

自ら立ち上げた「なんじぃAC」で選手達に指導する濱崎さん(中央奥)【写真:長嶺真輝】
自ら立ち上げた「なんじぃAC」で選手達に指導する濱崎さん(中央奥)【写真:長嶺真輝】

競技人口“全国最下位”の中学年代で受け皿に

 本島中部のうるま市出身で、与勝中学校で陸上を始めた濱崎さん。自らを高めていく過程やチームで戦う競技性に魅力を感じ、「将来は陸上でご飯を食べたい」とのめり込んだ。

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 長距離選手として沖縄工業高校時代に頭角を現し、亜細亜大学では箱根駅伝に2度出走。その後、沖縄県勢では数少ない実業団選手に。小森コーポレーションで6年続けて全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)を走り、主将も務めた。エース区間の4区を走ったこともある。2017年に打ち立てたマラソンの2時間11分26秒は沖縄の県記録であり、五輪選考会にも出場した。今も現役で大会に出場し続けている。

 濱崎さんには、国内の一線に身を置いていた頃から強い思いがあった。「沖縄のレベルを引き上げたい」。都道府県対抗駅伝ではいつも下位。その感情は、大城さんが現役時代に抱いた劣等感、使命感と通じるものがあった。

 2017年に帰省後、本島南部の南城市役所に勤務しながら市民ランナーとして競技を続けた。さらに「自分が走るだけじゃ変わらない。これまでの経験を直接伝えるしかない」という思いを形にする。2018年、同市を拠点に小中学生を対象としたクラブチーム「なんじぃAC」を大学時代の先輩と一緒に設立し、長距離選手の育成に乗り出した。

 この取り組みが、暑さとは別に沖縄が抱える難題に一石を投じることになる。

 実は、沖縄は他県に比べて中学校の陸上部が極端に少ない。2022年度の日本陸上競技連盟の登録者数は、中学で全国最下位の737人。46番目の鳥取県は1018人だが、県全体の人口は沖縄の3分の1ほどのため、いかに沖縄が少ないかが分かる。

 沖縄では、部活動の垣根を越え、各中学校で選抜された選手が競技ごとで競い合う独自の「地区陸上大会」(通称:地区陸)が半世紀以上に渡って開催されてきたこともあり、陸上自体が根付いていない訳ではない。ただ、「他の部活に所属しながら陸上もやる」というスタイルが定着してきたことも事実で、同年度の高校登録者数も677人と全国45番目の低水準だった。中学校の駅伝大会も、同様な形で様々な競技の部活動からの選抜でチームをつくる学校がほとんどだ。

 以前から陸上選手を発掘するハードルは高かったが、教員の働き方も含めた部活動改革が進む中、2023年を最後に地区陸で選抜された選手が出場する上位大会の県秋季陸上大会が終了。中学年代の受け皿を維持するため、クラブチームの存在意義はより高まっている。

 濱崎さんもその役割は強く自覚している。

「自分がやるべきことは、沖縄の中学生が長距離に触れる場をつくり、魅力を伝え、母数を増やすことです。その上で、高校でより本格的に競技をやってもらう。『沖縄が弱い』というイメージは全国高校駅伝の結果によるところが一番大きいので、そこの強化につなげたいです」

 なんじぃACの効力は、立ち上げ直後に早速発揮された。

 当時、那覇市立仲井真中学校で野球部に所属していた上原琉翔、バスケットボール部だった嘉数純平らが選抜されて出場した県の駅伝大会で優勝を飾り、高い将来性を有していたため、濱崎さんが声を掛けてなんじぃACの練習にも参加していたのだ。那覇市内にも陸上の強豪校はあるが、彼らが地元から離れた北山高校に進学した経緯はこうだ。

「僕が沖縄に帰ってきた直後から、昭子先生は『実業団でどんな練習をしてたの?』と尋ねてきてくれたり、選手をレベルアップさせるために北山高校の練習に自分を参加させたりして、いい意味で僕を利用してくれていました。先生から依頼を受け、先生が彼らを勧誘する場をつくり、北山の指導方法に魅力を感じたようです。特に上原は当時からカリスマ性が強く、彼が進学先を決めたことで、この世代における沖縄の中学校トップ10のほとんどが北山高校に行きました」

 2019年、上原や嘉数ら黄金世代が集結。「自分たちは沖縄の歴史を変えるためにここに来ました」。入学時点でそう宣言した選手たちを前に、大城さんは頼もしさを感じたという。「私もずっと沖縄の長距離を変えたいと言っていて、彼らと目指すところが一致しました。練習の改革を続けていましたが、彼らもすんなり変化を受け入れてくれました」と振り返る。

 後編では、大城さんが北山高校で取り組んださらなる練習改革、そして、高校野球で一躍注目を浴びる“あの高校”を舞台とした次なる一手を紹介する。

(長嶺 真輝 / Maki Nagamine)

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