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NBAの最新センセーション 19歳の神童ルカ・ドンチッチのカネを払っても見たい凄さ

1月5日、フィラデルフィアでの76ers戦後こと――。ロッカールームでそう語ったルカ・ドンチッチの声は小さく、ほとんど聞き取れないほどだった。ダラス・マーベリックス(以下、マブス)の新星は、まだ19歳。近くで見ると表情もあどけなく、スロベニア出身の少年はまだ未成熟でシャイなイメージを与えるはずだ。

NBA注目株のルカ・ドンチッチ【写真:Getty Images】
NBA注目株のルカ・ドンチッチ【写真:Getty Images】

新人王最右翼、レアル・マドリードから来た神童が放つ輝き

「(欧州でもNBAでも)同じバスケットボールだから、楽しんでプレーしているよ。ここまでは自分で考えていたよりも良いプレーができていて、嬉しく思う。このまま進んでいきたい」

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 1月5日、フィラデルフィアでの76ers戦後こと――。ロッカールームでそう語ったルカ・ドンチッチの声は小さく、ほとんど聞き取れないほどだった。ダラス・マーベリックス(以下、マブス)の新星は、まだ19歳。近くで見ると表情もあどけなく、スロベニア出身の少年はまだ未成熟でシャイなイメージを与えるはずだ。

 ところが、ひとたびコートに立つと、そんな印象は一変する。今季開幕以降、最も大きな注目を集めてきたルーキーはドンチッチに他ならない。再建中のマブスでいきなり主力の役割を託された大物新人は、最初の38試合でいきなり平均19.4得点、4.9アシスト、6.7リバウンドという堂々たる成績をマーク。11、12月と2か月連続でウェスタン・カンファレンスの月間最優秀ルーキーに選出され、新しいものが好きな米スポーツ界の最新のセンセーションになっている。

「彼は当初から自分がNBAでもやっていけると感じていて、実際にそれを示してきた。若手としては素晴らしいオールラウンドなスキルを持っていて、ジャンパーも、フローターも、ピック&ロールも何でもこなせる。小柄な相手にはポストアップもできる。19歳であれほど多才な選手にはお目にかかったことがないよ」

 欧州の大先輩で、長くマブスの屋台骨を背負ってきたドイツ出身のダーク・ノビツキーはそう驚嘆していた。その言葉通り、ドンチッチは得点力、プレーメイキング力、サイズをすべて備えた万能派。NBAへの即座の適応を可能にしたバスケットボールIQの高さも出色で、一般的に新人王候補の最右翼と目されている。その働きが、昨年12月12日時点で15勝11敗というマブスの予想外の好スタートの主要因になったことは間違いない(注・以降にチームは失速し、現在18勝21敗)。

 16歳時に欧州の名門レアル・マドリードの一員としてプロデビューしたドンチッチは、昨季は史上最年少でユーロリーグMVPを受賞。レアルの優勝に大きく貢献するど、昨年度のNBAドラフトにエントリーした。

 全体3位でアトランタ・ホークスから指名されると、直後にマブスは同じく有望株のトレイ・ヤング、来年度のドラフト1巡目指名権(プロテクト付き)を放出してまでドンチッチをトレードで獲得。そんな動きからも、ヨーロッパ産の新たなスーパースター候補への評価の高さが伺い知れる。そして、今季前半を見る限り、19歳の神童を再建の軸に据えようとしたマブス首脳陣の判断は間違っていなかったようだ。

“カネを払っても見たい”と思わせるドンチッチの才能

「彼は独特の存在。とてもユニークな選手だよ」

 マブスのリック・カーライルのそんな言葉通り、ドンチッチに関して何より素晴らしいのは、そのプレーにオリジナリティと創造性が感じられることだ。コート上を縦横無尽に駆け回り、軽やかにステップを踏む。パスワークも上質で、一時たりとも目が離せない。印象的な武器は数多いが、特にステップバックジャンパーは一見の価値があり、早くもシグネチャームーブ(代名詞となる動き)として定着した感がある。

 5日の76ers戦では連戦の2戦目とあってか疲れが感じられ、FG4/16で14得点止まりに終わった。それでも大事な最終クォーターにはプレーのレベルを上げ、5得点、3アシストで底力を示した。コート上の振る舞いは生き生きとしており、バスケットボールの原点である“楽しさ”を周囲にも思い出させる。この日のドンチッチはマブスを勝利に導けなかったが、甘いマスクも備えたスロベニアのファンタジスタが抜群のスター性を備えていることは誰の目にも明白だった。 

「僕はプロとしてヨーロッパで多くの優れた選手たちとプレーしてきたけど、その一方でレブロン・ジェームズのプレーをずっと見てきた。だからNBAでのゲームで彼に会えて、対戦できたのは特別なことだった」

 前述通り、試合後のインタビューのやり取りは平凡だったが、そんな中で唯一ほんの少しだけ表情が緩んだのはレブロンについて話したときだった。ドンチッチが1年目に残している数字は、実はレブロンがルーキーシーズンにマークしたスタッツに匹敵する。4日に発表されたオールスター・ファン投票の途中経過でも、ウェスタン・カンファレンスのフロントコート部門ではレブロンに次ぐ2位だった。

 確かな実力に甘いマスクも相まって、スターダム突入の可能性は十分。今後、憧れの大先輩と同じように、早い段階から大きく飛躍していけるかどうか。ドンチッチにも証明すべき部分はまだ残っているが、少なくとも、“カネを払っても見たい”と感じさせる選手がまた新たにNBAに出現したことを私たちは心から喜ぶべきなのだろう。

(杉浦 大介 / Daisuke Sugiura)

杉浦 大介

1975年、東京都生まれ。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、ボクシング、MLB、NBAなどを題材に執筆活動を行う。主な著書に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)、「イチローがいた幸せ」(悟空出版)。

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