侍JAPANと対戦、豪州主将の本業は「フルタイム消防士」 火を消し、球を追う10年「誇り持っている」
マイナー生活9年の後で選んだ消防士「誇りを持っている」
ただ一方で、野球と消防士の仕事は、お互いに生きることもある。まずは「両方とも身体的に壮健でないといけない」こと。そして追い詰められた状況でも冷静な思考を保ち、素早く考えられるようになるのがこの兼業の利点だという。「消防士の仕事をしているとアジャストすることが必要になるけど、野球でも試合を通してアジャストしないといけない」。2つの仕事で、対応力を磨き上げているのだ。
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ケネリーは2005年に捕手としてフィリーズと契約。2013年までの9年間、米球界で大リーグの夢を追った。2012年には3Aまで上がったこともある。その後は故郷のパースに戻り、豪州のプロリーグでプレーしてきた。野球と消防士の両立は時間的にも、双方の技量を保つ上でも簡単ではない。
特に、国を背負う代表選手としてプレーするならなおさらだ。ただケネリーは「10年間、うまく調整しないといけない状態を続けているけど、それに誇りを持っているんだ」と、この過酷な状況すら楽しんでいる。1日24時間の中から、勤務のほかにトレーニングする時間をひねり出し、野球の練習に励む。「特に、このレベルでプレーするなら絶対に必要だからね」。今や代表では大ベテラン。野球選手としてのキャリアを、どう終えたいと願っているのだろうか。
「勝つことだよ。この大会にも勝ちに来ている。チームとしてはまだ構築中の段階だけど。この大会に参加できることを楽しまないといけないけど、やはり優勝したい。そのゴールにはまだ到達できていないからね」
豪州は昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、韓国を破るなどして同国初の準々決勝進出を果たした。ケネリーは、その上まで見据えて兼業を続けている。野球を愛し、本業にも活かす。過酷なことは間違いないが、なんとも豊かな人生を送っている。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)