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高橋大輔復活の裏で浮上した「第3の男」問題 32歳の背中は“若手の刺激剤”になるか

羽生、宇野に続け…姿を見せない「第3の男」をどう育てていくのか

 それでも、全日本選手権から世界選手権までは2か月半ほど時間がある。その時間を使えば、高橋自身が問題として挙げた戦う覚悟や準備(練習)不足はそれなりに解決できるはずだが、なぜ、代表の座を勝ち取れなかった「現役バリバリ」の後輩に譲ったのか。そこには高橋なりの優しさがあった。

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「僕はフィギュアスケートが好きで、それを素直に言えます。今、(若い選手が)どんどん続いて成長して欲しいという気持ちと、自分が頑張って勝ち取りたいという気持ちは同じくらいなんです。後輩たちが成長して羽生君を抜かしていく。昌磨を抜かしていく。そんな風にこれから出てくる若い人たちがどんどん抜かしてレベルアップして欲しい気持ちが、自分が活躍したいという気持ちと同じくらいあります。その上で冷静に考えて判断して、『僕じゃないだろう』と。希望がある若い選手たちがいろいろ経験することが大事だと思っています」

 現役時代から「俺が、俺が」とあからさまに自己アピールをする選手ではなく、その演技同様に繊細で周囲に心配りができる選手だった。「ガラスのハート」と言われて鳴かず飛ばずの時代から、期待された大会で不甲斐ない結果を残したり、選手生命に関わる大けがを負ったりと何度も挫折を味わってきた。そんな苦節を持って、日本男子のエースとして一時代を築いた高橋は、心優しきアスリートであり、その人柄の良さは誰もが認めるところだ。だから、今回、世界選手権代表の座を譲ったことは、さいたまスーパーアリーナである世界選手権の舞台で高橋の演技が見たかった人間にとっては非常に残念ではあるが、現役続行の意思を持つ高橋というスケーターを今後も競技会で見られることを考えれば、次の楽しみに取っておくということで尊重すべきことだと納得するしかない。

 昨年末の全日本選手権は「絶対的エース」が3年連続で不在でも現役復帰した高橋のお陰で例年以上に盛り上がりを見せた一方で、世界で活躍する羽生結弦と宇野昌磨に続く選手が出現していない日本男子の現状を明らかにしてくれた。なぜ、ポスト羽生や宇野に続く選手が、次の北京五輪に向けて育っていないのか。原因はいくつかあるが、その一つは、羽生というあまりにも突出した選手が身近にいることで委縮して諦めモードに陥った次世代の成長が遅かったことは否めない。

 さらに挙げると、その後に続くべきジュニア世代においてもしっかりとした強化体制の下で育成されておらず、個々のスケーターやコーチの努力に任されているからではないだろうか。フィギュアスケート人気がブームで終わらず、しっかりと定着しつつある昨今、しっかりと資金調達して強化費を捻出して、強化指定選手に還元できるような仕組みをそろそろ作らなければ世界で活躍できる選手は育たないのではないだろうか。ソチ五輪以降、緻密な強化育成が疎かになっていると感じるだけに、世界の舞台を視野に入れながら戦う覚悟を持って来季に挑むと公言した高橋という“刺激剤”に間近で触れる機会を持つ「第3の男」候補のスケーターたちが、どんな成長ぶりを見せ、どう意識改革をしてくるのか、楽しみにしてみたい。

(辛 仁夏 / Synn Yinha)

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