衝撃V2中谷潤人を作った米国合宿で目撃 汗だくヘロヘロ…15歳から続く「精神と肉体」の過酷修行
過酷な練習はスパーの後、ヘロヘロで強打を連発
この日は12回を終えた後が過酷だった。サンドバッグ3つ、壁に掛かったクッションを連続して打つ練習。ステップを踏み、計4箇所にパワーパンチを打ち続けた。マネジャーの弟・龍人氏が「出し切る!」「最後だよ!」と檄。重くなる体を気合いで動かし、ヘロヘロで滝のような汗を流した。試合中の苦しい時も手を出せるようになる。
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「米国合宿は毎回あんな感じです。動きながら相手を追ったり、下がったりするイメージ。スパーの後にサンドバッグやシャドーで追い込みます。なかなか手が出てこない時がありますけど、それを乗り越えると出てくるようになります」
世界で最も権威のある米専門誌「ザ・リング」の階級を超えた格付けランク「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」は9位に。2位の世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)に次ぐ世界的な評価を受けるまでになった。試合を終えるごとにファンの期待は高まり、ライト層の注目も増している。
「そういう注目が大きくなればなるほど、期待もだんだん大きくなる。その期待を上回るのが僕の仕事。皆さんに何かを感じてもらえる一つのコンテンツだと思っています」
帰国から2週間。日本初の7大世界戦興行で完璧なコンテンツを届けた。77戦でダウン経験のない頑丈な挑戦者。序盤は相手のパンチ力、間合いを測り、情報集めに徹した。「距離を勉強して、パンチの入るタイミングを見極めながら組み立てた」。初対戦の選手とスパーをする時と同じだ。
徐々に多彩なジャブと重い拳で相手にダメージを蓄積。右アッパー2連発を立て続けに入れた。衝撃は6回だ。残り1分30分、強烈な左オーバーハンドから10連打。腹ばいに倒し、再開後もフック、アッパー、ボディーと全方位から攻めた。3つのサンドバッグを叩くようにステップを踏み、追い込んでいく。残り7秒。粘る相手の視界をジャブで塞いだ瞬間、長い左ストレートを爆発させた。
「しっかり仕留められました」
涼しい笑顔が恐ろしい。タフな相手を倒せたのも、タイミング、箇所ともにピンポイントで強打を当てたから。フィニッシュまでの過程にも米国で磨いた遠近自在の多彩さがある。長いリーチを生かせばポイントアウトもできるが、それはしない。極上のコンテンツを届けたいからだ。
「近い方が相手を消耗させられる。遠い方が一番自分にダメージなくできるけど、相手を倒すには近くで消耗させる手段も必要」