なぜ、高橋大輔は今なお輝けるのか 「ボロボロだった」復帰から取り戻した“質”
7月の現役復帰発表から半年が経ち、復帰戦から数えて3試合目となるフィギュアスケート全日本選手権に5年ぶりに戻ってきた高橋大輔(関大KFSC)。かつての日本のエースが再び輝きを放って、全日本という晴れ舞台のリンクに立った。32歳という年齢は、いまの時代を引き継いで活躍中の選手達とは10歳前後も違うが、その華麗な滑りはまったく色褪せることなく、むしろ、2014年ソチ五輪後に現役引退してからの様々な経験が血となり肉となって、肉体的にも精神的にも進化成長しているように感じる。
5年ぶり全日本選手権でSP2位、かつてのエースが大舞台で示したもの
7月の現役復帰発表から半年が経ち、復帰戦から数えて3試合目となるフィギュアスケート全日本選手権に5年ぶりに戻ってきた高橋大輔(関大KFSC)。かつての日本のエースが再び輝きを放って、全日本という晴れ舞台のリンクに立った。32歳という年齢は、いまの時代を引き継いで活躍中の選手達とは10歳前後も違うが、その華麗な滑りはまったく色褪せることなく、むしろ、2014年ソチ五輪後に現役引退してからの様々な経験が血となり肉となって、肉体的にも精神的にも進化成長しているように感じる。
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今大会前に高橋はこんなことを話した。
「基本的なジャンプ自体は5年前よりもスキル(技術)が上がっているんじゃないかと、今季を通して感じています。シーズンをスタートしたときに、一からジャンプを作り直そうという気持ちで取り組み始め、(現役時代に)もともと持っている自分の感覚よりも、いまの自分の体にどれ(どんな跳び方)が合っているかということを常に考えて練習してきました。そして、手術した膝とずっと付き合いながらも、陸上でダンスをしたり、いろんなことを経験したりしていく中で自分の体がどういうものかを、よりいっそう、4年前よりも分かってきたことが、いまの(進化した)ジャンプに繋がっていると思います。あとは、(現役とは違って)気持ち的にもストレスフリーだからだと思いますね(笑い)」
アスリートにとって、全盛期は誰にもでもある。そして、このピークを迎えた後は、下降線をたどって思うように実力を出せなくなってしまうこともあるが、すべてのアスリートにこの法則が当てはまるわけではないことも確かだ。まして、高橋が現役引退を決意した4年前は、心のどこかで「まだやり切った」と思えないまま、右膝の怪我のせいで競技生活から離れざるを得なかったわけで、どこか悶々とした気持ちを発散させる場所を求めていたに違いない。だから、米国ニューヨークでダンス留学したり、舞台でのダンスパフォーマンスを行ったり、当分は滑らないと言っていたにも関わらず、すぐにアイスショーの世界に戻ったりしたのではないだろうか。すべては、今回の現役復帰への道に導くプロセスだったと言えなくもないだろう。
現役復帰のときに掲げた目標はあえて世界の舞台ではなく、「全日本選手権での最終グループ入り」とした。これはあくまでも序章に過ぎないはずだと、期待も含めて思ったが、予想通り、その存在感を見せつけている。復帰戦の近畿選手権で「ボロボロだった」と言いながらも3位、そして2戦目の西日本選手権で現役時代を彷彿とさせるステップシークエンスの出来栄えと得点源となるトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の再習得によっての優勝を文句なしに勝ち取ったことは、昔取った杵柄だった。