「口に出すって恥ずかしいことじゃない」 メダルを狙い、涙した古賀紗理那 28歳が引退まで追い求めた勝利
渡仏前に強い決意「自分たち以外の人のことは気にする必要ない」
フランスに渡る前の古賀から、勝利に対する強い意欲を感じた場面があった。7月1日、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターで取材に応じた時のこと。パリ五輪出場を決めたチームは、この2日前に新たな目標「五輪でメダル獲得」を定めていた。
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古賀は出場が決まった段階で既に考えていたという。NLで2位となったとはいえ、五輪の表彰台はまた別の難しさがある。それでも「大きな目標を口に出すって全然恥ずかしいことじゃない。自分たち以外の人のことは気にする必要ないなって、私自身は凄く思っているので」。全員で意識を共有。「メダルを獲得するって口に出して言おう」とまとめあげた。
直前に自身のSNSで、パリ五輪をもって現役引退をすると発表。バレー人生の集大成と位置づけた舞台は、1次リーグ1勝2敗で決勝ラウンドに進めなかった。現役最終戦となったケニア戦に3-0で勝利した後には、コート上で涙を見せ、なかなか立ち上がれなかった。
ケニア戦は決勝ラウンド進出に僅かな可能性を残しながらも、ほぼ絶望的な状況で迎えた。試合前の円陣。「今日が最後かもしれないし、最後じゃないかもしれないけれど、それぞれが持てる力を全部出そう」「紗理那のためにも頑張ろう」。声出しを務めたチームマネージャーの言葉に、思わず涙しそうになった。
望んでいた結果ではなく、悔しさもあるが、勝利を目指して積み上げてきた3年間に後悔はない。「感謝しながら(チームが)解散できてよかった」。いつも味方でいてくれた家族も、現地で最後の雄姿を見届けてくれた。
「悔しい思い、惨めな思いをした部分もたくさんあったんですけど、それでも人としての成長もできた」
会見場には、ともにパリでプレーした男子日本代表の夫・西田有志も駆けつけた。笑顔で2ショットを撮影。今後は未定としながら「少しでもバレーボールに携わって行ければ」「夫のお世話を頑張りたいなと思っています」と涙はなかった。16歳で代表デビュー。長らく日本バレー界に貢献してきた28歳が、惜しまれながらもコートを去った。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)