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五輪から消えた野球「裾野が小さく…」募る危機感 復活のロス五輪は「勝てばいい」じゃない日本の責務

自身が率いたバルセロナ五輪当時のユニホームを前にした山中氏【写真:羽鳥慶太】
自身が率いたバルセロナ五輪当時のユニホームを前にした山中氏【写真:羽鳥慶太】

“新たな野球界”の象徴だった東京五輪の侍たち

 東京五輪の日本代表は、期待に十分に応えてくれた。

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「私は“品・知・技”が強いチームには必要だとよく言います。品性、知識、技術です。そのどれをとっても、東京五輪の日本代表は昨年のWBCのメンバーに劣っていなかったと思います。彼らの発言のひとつひとつが、じつにスポーツマンらしいものだった」。稲葉監督も、まず選手の話を聞いてから物事を進める“共感力”を武器に新たな指揮官像を発信していった。新しい野球界の象徴ともいえるチームだっただけに、大会が無観客となった無念も大きい。

 野球のイメージが悪くなった理由の一つが、日本では野球の「勝たなくてはならない」という側面が強くなりすぎたためだという。「勝ちさえすればいいとなって、それがしかも強かったんですね。本当のスポーツマンシップが失われてしまった。国際大会で審判からひんしゅくを買い、警告まで受けるようになってしまった」。1992年のバルセロナ五輪代表監督をはじめ、五輪野球に長く関わってきた山中さんには、世界からの視点がどうしても気になった。

 その反省をもとに、全日本野球協会の会長になってから続けているのが、スポーツマンシップとは何かという講義を指導者研修で必修としたことだ。「私も目からうろこでしたし、恥ずかしかったですよ。戦う前にまずスポーツマンじゃないといけない」。相手を尊重し、フェアに戦うこと。その究極の場が五輪でもあるのだ。

 野球は前回、1984年に行われたロサンゼルス大会でも公開競技として行われた、予選で出場権を得られなかった日本は、キューバが政治的理由で参加をボイコットしたために繰り上がりで本戦出場を果たし、金メダルに輝いた。山中さんは「日本の他の競技が振るわなかったのもあって、俄然注目を集めましたね。あとドジャースタジアムがいっぱいになったのは、IOC(国際オリンピック委員会)に強烈なインパクトを与えたんです」と当時を振り返る。

 そして2028年、再び行われるロサンゼルス五輪で復活する野球には、ドジャースの大谷翔平投手が参加を熱望するなど、ついにメジャーリーグの選手が参加するのではないかという議論もある。メジャーリーグ労使の話し合いなど壁はあるが、叶ったときの影響力は過去の五輪の比ではない。そこで日本代表に求められるのは当然「勝てばいい」ではない。山中氏は言う。

「日本の野球が強ければいい、じゃないんです。世界の野球人口を増やす上で、一番影響力が大きいのがオリンピック。野球大国を自任していても、五輪種目かどうかで正直かけられるお金が全然違う。日本以外の国では、もっと極端です。僕は野球とは“人生を豊かにする最高級の遊び”だと思うんだけど、そんな誇れるスポーツが、世界にもっと広がる機会になってもらいたいですね」

(次回は空手)

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)


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