「お前のパスにお金は払ってない」 日本人FWがスペインで要求された仕掛けの意識
「誰もが点を取ってナンボ」…草サッカーでも実感したスペイン人の負けず嫌い
スペイン人の攻撃好き、負けず嫌いは、街で飛び入り参加した草サッカーでも実感したという。
「みんな自己主張が強くて、誰もが自分が点を取ってナンボだと思っている。おじさんたちが平気で角度のないところから狙って来ます。子供も交じった遊びでも、わざと抜かれてあげたら『真面目にやれ!』と怒鳴られました」
2部所属のレイダだったが、カップ戦ではバルセロナとも対戦。「コイツら、うめえなあ、と感心しながら試合をした」という。ちなみに、同じスペイン1部のデポルティボ・ラ・コルーニャの育成担当に「どんな子を獲ってくるの?」と尋ねたら、「ドリブルのできる子」と返ってきた。
そんなスペインサッカーに馴染んだ安永だけに、1999年に帰国後、清水エスパルスではイングランド人のスティーブ・ペリマン監督にすべてを否定され、誇張抜きで毎日呼び出されたという。
「数的不利なら空いている選手がいるんだからパスを出せ。ファーストトップはゴールを背にしているんだから、無理に前を向こうとするな」
そういう意味では、仕掛けが大好きなドリブラーである乾貴士は、スペイン向きだったに違いない。ドイツ時代から「課題は仕掛けた後のフィニッシュ」だと指摘されてきたが、バルサから奪った2ゴールは、エイバルのサポーターの心を掴むには十分だったはずである。
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加部究●文 text by Kiwamu Kabe