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オリンピックの今、問う「なぜ人はスポーツをするのか」 源泉にある人間の欲求とルールが生む面白さ――中京大教授・來田享子

スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、大のスポーツファンも、4年に一度だけスポーツを観る人も、五輪をもっと楽しみ、もっと学べる“見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値が社会に根付き、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

中京大・來田享子教授が考える「人がスポーツをする理由」とは【写真:ロイター】
中京大・來田享子教授が考える「人がスポーツをする理由」とは【写真:ロイター】

「シン・オリンピックのミカタ」#71 連載「なぜ、人はスポーツをするのか」第4回

 スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、大のスポーツファンも、4年に一度だけスポーツを観る人も、五輪をもっと楽しみ、もっと学べる“見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値が社会に根付き、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

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 今回は連載「なぜ、人はスポーツをするのか」。スポーツはなぜ世の中に必要なのか。五輪という極限の頂に辿り着いたアスリートや専門家だからこそ、導き出される“アンサー”を問う。第4回は中京大学・來田享子教授。日本オリンピック委員会理事を務め、オリンピック史やスポーツにおけるジェンダー問題を専門とする。研究者のアカデミックな観点からスポーツとオリンピックを分析し、人がスポーツをし、五輪を求めた歴史と背景を紐解いた。(取材・構成=長島 恭子)

 ◇ ◇ ◇

 古代オリンピックが初めて開催されたのは紀元前8世紀。人間は長い歴史のなかで、人工的な場所を作り、道具を作り、クリエイティブな制約を設けながら、スポーツをする楽しみを見出してきました。

 なぜ、人はスポーツをするのか?

 その源泉にあるのは、「欲望を満たしたい」という人間の欲求です。

 例えば誰かと競い合い、勝ちたいと思うこと。自分の体を使って、思いどおりのパフォーマンスを発揮したいと思うこと。そして、純粋に「楽しみたい」という気持ち。それらの欲望が核であることは、間違いないと考えます。

 人はその「楽しみ」に、時代、時代で「意味」をつけてきたのだと思います。

 古代ギリシャにおいては、オリンピックは競技会ではなく、神を崇める宗教行事としての競技祭でした。当時、人々は神に近づこうと競い合い、自分を高みに引き上げていくことに楽しみを見出しました。

 近代に入ると、スポーツの在り方は二つの形で確立されます。

 一つは「余暇の楽しみ」として。資本主義の発展で人々は高い生産性と成果を求められるようになります。働く時間も食事をする時間も決められた生活を送るなか、労働者は余暇を楽しみたいという欲望が生まれ、自由になる時間にスポーツを楽しむようになります。

 もう一つは「軍事力の向上」です。トレーニングによって規律正しく動けるようになり、チーム一丸となって折れない精神と勇気を持って前進する。領土の獲得で対立を繰り返す欧米の列強国は、スポーツのこういった一面が自国の人間育成に役に立つと気づいた。つまり、国家に貢献できる人材教育のツールとなったのです。

 そして、近代オリンピック提唱者である、ピエール・ド・クーベルタンが現れます。彼はそのどちらでもない道を、スポーツに見出します。

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