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暴言、差別、虐待…取り締まれぬ五輪アスリートへの誹謗中傷 期間中「5億件SNS投稿」にAIも苦戦か

SNSを通じた投稿がアスリートのメンタルヘルスに悪影響が明らかに

 オンライン上での暴言やいやがらせは、誰もがターゲットになるリスクがあるだろうが、何人かのアスリートが集中的に攻撃されることがある。東京オリンピックの期間中、世界陸連は161人の選手の旧Twitter(現X)アカウントを対象に調査を実施し、24万件の投稿を分析した。その結果、132件の差別的な投稿が119人の作者から発信されていた。ターゲットにされたアスリートは23人だったが、そのうち女子アスリートは16人、その女子選手のなかでも、2人の黒人アスリートに対する差別的投稿が多かったという。投稿の内容は性差別、人種差別だけではなく、トランスフォビア、ホモフォビア、根拠のないドーピング疑惑など多岐にわたった。2023年の世界陸上では人種差別とみなされる投稿が増え、全体の3分の1以上を占めていた。男性アスリートへの虐待的投稿が大幅に増えて51%、女性アスリートへは49%。そして、モニターされた1344人のアスリートのうち、2人をターゲットにした虐待的投稿が44%を占めていたという。

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 東京大会での調査結果を踏まえて、2023年に実施された研究では、SNSを通じた差別、虐待、ヘイト投稿がアスリートのメンタルヘルスに悪影響を与えることも明らかになった。そして、SNS上で差別や虐待の対象となるのはアスリートだけではなく役員などにも及ぶことがわかったとしている。

 それぞれの競技組織で起こった虐待行為は、行動規範に則って、虐待の被害に遭った人を守り、虐待行為を罰するようになっている。リアルなスタジアムやアリーナでは、観戦する全ての観客の安全を守るために、主催者や施設側が規則を設けており、これに沿って、虐待や差別を行った観客をその場から離れさせたり、退場させたりすることもできる。SNSは世界各国のオリンピックファンと距離を越えてつながり、興奮を共有できるツールだが、何らかのきっかけで特定の選手が集中的に差別されたり、暴言を浴びせられたりするやっかいなもので、AIを駆使すると発表した今大会でも、取り締まりは簡単なことではないようだ。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)


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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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