中国斬り寸前で蘇った張本智和の言葉 帰化から10年、他人を認めない「ネットの声」の受け流し方
パリ五輪は1日、卓球男子シングルス準々決勝が行われ、世界ランク9位の張本智和が2023年世界王者の同4位・樊振東(中国)に3-4で惜敗した。元世界1位の金メダル候補とフルゲームの熱戦。金星目前まで迫った今、2年前に話していた張本の言葉が蘇った。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
パリ五輪
パリ五輪は1日、卓球男子シングルス準々決勝が行われ、世界ランク9位の張本智和が2023年世界王者の同4位・樊振東(中国)に3-4で惜敗した。元世界1位の金メダル候補とフルゲームの熱戦。金星目前まで迫った今、2年前に話していた張本の言葉が蘇った。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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パリ五輪中、各競技で結果に納得のいかない人の声がネットで選手、関係者にぶつけられている。心の痛みを発信する選手も現れた。誹謗中傷が社会問題化して久しい。「多様性」という言葉も耳慣れたものになったが、頑なに他人を受け入れない人もいる。心無い言葉をぶつけられた側はどう対処すればよいのだろうか。
そんなことを考えながら張本の奮闘を見ると、19歳だった2年前に聞いた彼の言葉が蘇った。
2022年世界卓球団体戦(中国・成都)の男子準決勝。日本は中国に2-3で惜敗したが、2勝をもぎ取ったのが、当時シングルス世界ランク4位の張本だった。同1位の樊、同11位の王楚欽を撃破。9連覇中だった絶対王者を追い詰め、世界に衝撃を与えた。
両親は中国・四川省出身。父はプロ選手として活躍し、1990年代に日本へ移り住んだ。自身は宮城・仙台市で生まれ、ラケットを握り始めたのは2歳の時。幼い頃から全国大会で活躍し、11歳を前にした2014年の春、5歳下の妹・美和とともに日本へ帰化した。
近年、多様性の流れが加速してきたとはいえ、これまで風当たりが強くなかったわけではない。「最初は別に何も気にしていなかった」と外野の声に無関心。しかし、活躍とともに少しずつ名前が売れ、「15、16歳の頃」にはネット上のコメントに傷つく瞬間もあった。
ただ、今は違う。自身のルーツとなる国と激闘を繰り広げた試合直後、「帰化選手」の境遇に対する本音を明かしてくれた。
「実際に自分と接してくれた方で、嫌なことを言って来た人は一人もいません。幼稚園から卓球を始めて、出会った選手、スタッフの中で嫌だった人は一人もいないです。今ではネットでそういうことがあることは、仕方ないと思っています。
もし、自分がもともと日本人だったとしても、何か言われることはあるでしょうし、親が日本人であってもあると思います。最初はちょっとつらい気持ちがありましたけど、どんなトップ選手でもあることなので、今は嫌なことは全くないです」