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ドーピング陽性は「絶対やっていない」 世界一から転落…絶望も救いもくれた水泳に育てられたもの――競泳・古賀淳也

古賀さんは今、水泳教室で全国の小学校を飛び回っている【写真:中戸川知世】
古賀さんは今、水泳教室で全国の小学校を飛び回っている【写真:中戸川知世】

陽性後に最初に会えたのも競技人生に関わった人たち

 もともとは人付き合いが凄く苦手。小学生の時も基本的には学校が終わったらスイミングで練習をする生活。友だちもそんなに多くない。だけど、水泳に行けば互いに大会に出て認め合ったり、隣同士で泳ぎ終わった後に話したり。水泳が人との関わりを実感させてくれて、関わり合いの中でどう動くべきかを教えてくれたものでした。

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 だから不条理なことを味わっても、スポーツに対してネガティブな意識は全くありません。逆にスポーツをやっている人だから気持ちをわかってくれた。陽性後に最初に会えたのも、競技人生に関わっていた人たち。だから、外にも出られなかったところから人に会えるようになっていった。

 そこで気兼ねなく、今も昔も変わらずに慕ってくれる選手、コーチがいたのが凄く嬉しかった。僕が故意にそういうことをする人間じゃないと信じてくれている。

 今年3月に引退し、今はトレーニングを継続しながら水泳教室で全国の小学校を回っています。子どもたちには不思議と懐かれますね。「まずは人の話を聞きましょう」「自分で試してみましょう」と伝えています。その後に結果がどうだったのか、周りと情報を共有する。水泳を通して、人との関わり合いの中で必要なものを勉強してもらう。

 水泳も、勉強も興味を持って取り組んでねって。その中で「本当に水泳って楽しいものなんだよ」と伝えたい。将来的には自分の目指すものに一生懸命取り組んでほしい。それが水泳以外でもいい。何かにしっかり打ち込める人間になってほしいと思います。

 今、僕が生きていてよかったと思える瞬間は心の余裕を感じた時です。練習後に疲労を感じながら、「はあー」とボーっとする時間。そういう時にこそ「あぁ、生きているんだな」と改めて思い直します。これは何かに一生懸命に取り組まないと実感できない。僕は水泳教室で体を使い、子どもたちにどう教えるのか頭を整理する。突き詰めることでホッとする部分が出てきます。

 でも、もう少し忙しくてもいいのかな(笑)。自分の活動にしっかりと真摯に取り組みながら、アクセサリー作りや表に出る仕事など、水泳以外にも挑戦の機会があればやってみたい。水泳教室の拠点はなく、お話をいただいたところに伺っています。先日は宮城や静岡に行き、8月は徳島、9月は新潟にも行きます。日程が調整できるのであれば、全国各地どこへでもお伺いします。

■古賀 淳也 / Junya Koga

 1987年7月19日生まれ、埼玉・熊谷市出身。37歳。5歳から水泳を始め、春日部共栄高から早大に進学。09年ローマ世界水泳で100メートル背泳ぎ優勝。50メートル背泳ぎは同大会と17年ブダペスト世界水泳で準優勝、14年アジア大会(仁川)で3連覇、日本選手権で3連覇含む9度優勝。16年リオ五輪400メートルリレーで8位入賞に貢献。18年4月にドーピング違反で国際水泳連盟から4年間の出場停止処分を受けたが、スポーツ仲裁裁判所に意図的ではないと認められ、2年間に短縮。20年8月に競技復帰。24年3月の国際大会代表選考会を最後に現役引退。50メートル背泳ぎの24秒24(09年)は日本記録。身長181センチ。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)


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