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「なでしこジャパン」誕生秘話 発案は1人の女性職員、広がる「○○ジャパン」愛称が世界一の球技大国化に影響【なでしこジャパン20歳の誕生日】

なでしこジャパンが7日、20歳の誕生日を迎えた。サッカー女子日本代表の愛称が発表されたのはアテネ五輪直前、2004年の七夕の日。「なでしこ」は女子サッカーの代名詞として広く知られ、その後各競技が代表チームに愛称をつける先駆けとなった。日本のスポーツ界にとって歴史的な節目となった「なでしこジャパン」。数多くの「ジャパン」が世界に挑むパリ五輪を前に、その誕生を振り返る。(文=荻島 弘一)

20年前の7月7日、「なでしこジャパン」発表会見に出席した(左から)丸山桂里奈、宮本ともみ、酒井興恵、小野寺志保、澤穂希【写真:産経新聞社】
20年前の7月7日、「なでしこジャパン」発表会見に出席した(左から)丸山桂里奈、宮本ともみ、酒井興恵、小野寺志保、澤穂希【写真:産経新聞社】

「日本代表=男子のこと」…愛称導入は日本サッカー協会の女性職員のアイデア

 なでしこジャパンが7日、20歳の誕生日を迎えた。サッカー女子日本代表の愛称が発表されたのはアテネ五輪直前、2004年の七夕の日。「なでしこ」は女子サッカーの代名詞として広く知られ、その後各競技が代表チームに愛称をつける先駆けとなった。日本のスポーツ界にとって歴史的な節目となった「なでしこジャパン」。数多くの「ジャパン」が世界に挑むパリ五輪を前に、その誕生を振り返る。(文=荻島 弘一)

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 ちょうど20年前の7月7日、東京・文京区のJFAハウスに女子日本代表選手が並んだ。澤穂希、宮本ともみ、酒井興恵、小野寺志保、丸山桂里奈の5人は、いつものユニホームではなく色とりどりの浴衣姿。手にしたボードには、澤の書いた「なでしこジャパン」の文字が躍った。

 当時、日本では代表チームに愛称をつけること自体が異例だった。競技名+日本代表か、全日本。ラグビー由来の監督名+ジャパンはあったものの、公式に代表に愛称をつけたのは日本スポーツ界初だった。七夕の日の「なでしこ」との出会いが、その後の女子サッカーを発展させた。

 きっかけは、日本協会職員のアイデアだった。アテネ五輪最終予選が行われたこの年の4月、代表チーム部の江川純子さんは仕事に追われていた。「日本代表は男子のことで、女子はすべて『女子』と入れないといけない。それだけで女子代表だと分かる愛称があればと思ったんです」

 日本のスポーツ界では異例なことだったが、海外には例があった。当時アジアの強国だった中国代表は「鋼鉄のパラ」と呼ばれていたし、オーストラリアは同国の代表的な歌からとった「マチルダス」を公式に愛称として使っていた。

 一職員のアイデアに賛同し、手嶋秀人広報部長(当時)が動いた。協会内や親しい記者たちにも根回しし、川淵三郎キャプテンに伝えた。代表が北朝鮮との激闘の末に2大会ぶりの五輪出場権を獲得したこともあって、日本協会として女子に力を入れようとしていた時期だった。キャプテンは公募を即決。七夕の日の愛称発表会見は、新たな船出の出発式になった。

 上田栄治監督に率いられた「なでしこジャパン」は直後のアテネ五輪で躍進した。1次リーグでスウェーデンから五輪初勝利をあげてベスト8に進出。準々決勝で米国に敗れたものの、最後まであきらめないひたむきさ、クリーンに戦い抜く姿勢が、ファンの心をつかんだ。

 当初は、選手たちからも「しっくりこない」という声が漏れ、メディアからは「競技が分からない」といわれた。それでも、選手たちの頑張りで「なでしこジャパン」は急速に浸透。五輪後には、それまで「Lリーグ」だった日本女子サッカーリーグの呼称を「なでしこリーグ」に変更するなど「なでしこ」は女子サッカーの代名詞になった。

 さらに、11年のW杯優勝で「なでしこジャパン」は国民栄誉賞を受賞。年末には新語流行語大賞にも選ばれた。「なでしこジャパン」の成功が、スポーツ界に与えた影響も大きい。06年には日本代表男子にも「サムライブルー」の愛称がつき、さらに他の競技にも広がった。

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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