最速ランナー田中希実に殻を破らせた感情の文章化 「勝って当たり前は凄く苦しい」からの転換点【日本選手権】
「一人で悶々とするのではなく、文章化してみたりして…」
田中はTHE ANSWERにて自筆コラム「田中希実の考えごと」を連載中。今大会前に掲載した第5、6回では「オリンピアンとして考えたこと」と題し、近年の苦しみやアスリート観をありのままの文章で表現した。感情の文章化などが競技にも繋がるという。
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「一人で悶々として自分の中に閉じ込めるのではなく、文章化してみたり、家族に自分の想いを伝えたりして、発散できるようになったのは一つの転換点でした」
「自分の中でイライラが溜まった時とかに逃げるのではなく、ちゃんと向き合うこと。それを今はまだ文章で書いたりすることでしか表現できないのですが、他の人に伝えること、外向きに意識を置くことが大事。今は一方通行で交流が下手なのかなと思いますが、それができるようになったら、もっと競技でも充実度が増してくるんじゃないかなと」
2021年東京五輪は1500メートル8位入賞。がむしゃらに走り、快挙を掴み取った。22年オレゴン世界陸上は3種目に挑戦。昨年ブダペスト世界陸上は5000メートルで8位入賞した。着実に成長し、パリ五輪へ向かう。
だが、パリ五輪への想いを問われると、「今までで一番いい状態でパリ五輪に行けるのですが、それがちゃんと表現できるかわからない」と涙。今大会の好タイムにも「これぐらいが最低限と思っていたことがただできただけ。1500メートル(の内定)はいいことだと思うんですけど、全然嬉しいと思えなくて」と厳しい。
どんなに考えてもあと1か月で大舞台はやってくる。
「今よりいい状態でパリを迎えたい。今回と同じように駆け抜ける期間にしたいと思います」
殻は何度でも破ればいい。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)