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SNS影響力は「大谷クラス」、700万人が支持する土井レミイ杏利が引退 26年続けたハンドボールは「人生の意味に」

ジークスター東京とトヨタ車体の選手に胴上げされる土井レミイ杏利【写真:荻島弘一】
ジークスター東京とトヨタ車体の選手に胴上げされる土井レミイ杏利【写真:荻島弘一】

“大谷クラス”のSNSフォロワー数「外に向けて発信しないと意味はない」

 そんな土井を一躍有名にしたのはTiktokクリエーター「レミたん」の存在。フランス時代の18年に趣味として始めたが、その面白さが受けて一気にフォロワー数を伸ばした。20年7月には100万人を突破、東京五輪開幕前には250万人、現在その数は700万人を超えている。

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「数字は気にしていません」という土井だが、700万人という数字は驚異的だ。日本人のスポーツ選手で比べてもTiktokでは断トツ。他のSNSを合わせても大谷翔平のインスタグラム800万人に次ぐ。「日本のアスリートでトップの座を譲っちゃいましたね。今度は1000万人まで増やして抜き返します」と笑うほど。競技の人気、選手としての知名度では遠く及ばないが「インフルエンサー」としてのフォロワー数だけなら「大谷クラス」なのだ。

 もっとも、レミたんの投稿にはハンドボール関連がほどんとない。見て笑える面白動画ばかりで、レミたんがハンドボール選手だと知らないフォロワーも多いという。ごくまれにハンドボール選手であることを明かし、競技を紹介する。それが「ハンドボールをメジャーにしたい」土井の策なのだ。「内向きの発信をしても広がらない。ハンドボールを知ってもらって、試合を見に来てもらう。外に向けて発信しないと、意味はないんです」。ハンドボールの競技人口は約10万人。その70倍のフォロワーが土井にはついている。

 すでに引退後の青写真を描き、準備も進めているという。もともと多方面に才能を発揮し、ビジネスにも精通している。「これからの人生は長い。セカンドキャリアを考えて、このタイミングで引退を決めました。今までの経験も生かして、いろいろなことを発信し、伝えていきたい」と話した。

 具体的なことは「まだ決まっていない」と説明したが、ハンドボールには今後も関わっていく。目指すのは競技の普及。スポーツ界では唯一無二の発信力を生かして、ジークスター東京はもちろん、日本協会や日本リーグとも幅広く活動していく思いがある。「今後の自分の行動は、9割9分はハンドボールのため」とも話した。

 フランスでのプロ経験もあって誰よりも高い意識でハンドボールに取り組んだ。日本代表入りした当初は、実業団選手たちの意識の低さに怒り「もっと意識を変えないと、ハンドボールの未来はない」と話した。食事や休養など普段の生活から練習や試合に臨む心構え、積極的に発信し、伝えてきた。少しずつ選手たちにプロ意識が芽生えたことも、パリ五輪での36年ぶりのアジア予選突破につながった。「これから、どんな選手が出てくるか。それも楽しみ」と日本代表にエールを送った。

「スポーツとの出会いが人の生き方に意味を与えることもある。僕の場合は、ハンドボールが人生の意味になりました。ハンドボールは僕にとってずっと楽しいものでした。苦しい時にも生きる希望を与えてもらいました」と、26年間に渡った競技人生への感謝の思いを口にした土井。日本では決してメジャーとは言えないハンドボールの世界で圧倒的な存在感をみせたレミたんはこの日、笑顔でユニホームを脱いだ。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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