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なぜ、高校生が平日の金曜夜に試合をするのか アメフト部の運営から透ける米国特有の部活事情

金曜夜の試合に出場するために学校を早退することも

 これに対し、反対意見のウィスコンシン州ウエストアリス公立校、体育教育ディレクター、ハーゲン氏の主張は次のようなものだ。

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「アメリカンフットボールはチーム競技であり、アメリカの青少年にとって理想的なスポーツである。エネルギーを発散する機会を与え、チームに入るという目標を作る。放課後から夕食までの余暇の時間に、成長期の彼らにとって不可欠な新鮮な空気と太陽の光を浴びながら、開放的な場所で運動をさせるものだ」としている。

 反対派もナイトゲームと入場料収入について言及している。

「ナイトゲームを奨励している人たちは異口同音に、星空の下でプレーする理由は入場料収入の増加だと述べている。運動部の運営には費用がかかり、その費用は自分たちで負担するべきものであることは認めるが、それにかかわらず、地域社会は教育委員会を通じて、アメリカンフットボールやその他の活動のために適切な競技施設を提供する義務がある。少年たちのためにアメリカンフットボールがあるのであり、試合のために少年がいるのではない」

 反対しているハーゲン氏も、ナイトゲームによって入場料が増えて、それが運営の助けになることは認めている。しかし、入場料収入に頼らず、「地域社会が教育委員会を通じて」競技施設などを提供しなければいけないとしている。「地域社会が教育委員会を通じて」という言葉は、地域の税金からなる教育委員会のお金で運営されるべきだ、ということだ。また、入場券収入のために、高校生選手が使われてはいけないとも反論している。

 この誌上討論から90年以上が経った今も高校のアメリカンフットボールの試合は夜に行われている。学校の運動部の活動費用は、学区の教育予算を主な財源としているが、現在も、入場料収入が運動部の活動資金の一部にあり続けていることがその理由のひとつだろう。

 私が調べた限り、アメリカでは1920年代から1960年代まで、入場料収入に頼らずに学区教育委員会からの予算によって学校運動部は運営されるべきだと意見がずっと出されているが、あまり実現していない。運動部は全生徒が参加するものではないので、そこに分厚く予算を充てることは避けたいという考えも絡んでいる。ただし、高校の試合の観客は、選手の家族や友人であることがほとんどで、大学やプロと比べると、近しい人からお金を得ているのが実態だといえる。

 さきに述べたように学校の運動部の公式戦は日曜日には組まれないことが一般的で、アメリカンフットボール以外の種目も平日の夜に試合を行うことが多い。公式戦に出場するために、ときには学校を早退することもある。課外活動による早退や欠席をどこまで認めるかは規則で決められており、コーチが学校に早退者・欠席者を知らせることなどの条件のもとに、大目にみられているふしがある。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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