「人任せのベテランではいけない」 バスケ川崎一筋12年、長谷川技がハッとさせられた後輩の姿
キャリア初の悔しさと後輩たちとの交流
最終的に川崎は33勝27敗、中地区4位の成績で今季のB1リーグを終えた。長谷川にとっては2012年の加入以来、初めてポストシーズンを戦わないシーズンとなった。
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「怪我人が出て、なかなかチームとして波に乗れないままシーズンが続いて、結果的にチャンピオンシップに出られなかったんですけど……まぁ、悔しいですね。ただただ。接戦をものにできない試合も何試合もあったし、そういうところが最終的にこういう結果を招いたのかなと思います」
シーズン最終戦となった5月5日の横浜ビー・コルセアーズ戦後、長谷川はこう言った。
今季の川崎は、勝ち負けにチーム全体の精神状態が大きく左右される、非常に不安定なシーズンを過ごした。「いい時はチーム全体がどんどんいい方向に行くけれど、チームとしてゲームプランが遂行できないことも多く、ミスが続くと一気に下を向いてしまうことの多いシーズンでした」と長谷川は振り返った。
チームとして結果は出なかった。しかし、今季は長谷川に新しい風が吹いたシーズンだった。
長谷川は今季加入した飯田遼に請われ、自身の技術や知見を他人に教えるという経験を初めてした。「今までは聞かれたことがないので教えることがなかったですけど、ディフェンスの手の使い方だったり、映像を見ながら『もうちょっと、こっちに行ったほうがいいよ』だったり。やっぱり言葉にして伝えるのは難しいなって思いました」と笑った。
その飯田は、4日の横浜BC戦(98-92)で河村勇輝に対して素晴らしいディフェンスを見せ、第1戦の勝利の立役者の1人となった。長谷川は「シーズンを通してなかなかプレータイムはもらえなかったけど、腐らずに毎日しっかりやってきた成果が最後の最後で出た」と愛弟子を讃え、「僕としても嬉しかったです」と目を細めた。
また、4月13日の信州ブレイブウォリアーズ戦(90-82)で、こちらも今季加入した野崎零也がディフェンスの戻りの遅さにチームメートに檄を飛ばしたことについて触れ、「ああいうところは本当に助かったし、シーズン序盤から出ていい言葉だったんじゃないかと思います」と言った後、「人任せにしているベテランもいけない。しっかりしなきゃいけないなと思いました」と、自らを顧みるきっかけを与えられたと明かした。
本稿執筆時点で、長谷川の去就は明らかでない。ただ、プロキャリアで初めて経験した痛みと気づきを携えて、引き続き“仕事人”ならではの妙味をコート内外で発揮してほしい。
■長谷川技(はせがわ・たくみ)
1989年7月21日生まれ、岩手県出身。190センチ・92キロ。名門・能代工業高で3年時のインターハイと国体の二冠を達成。卒業後は拓殖大に進学し、12年に東芝に加入した。オールラウンドな能力が光る選手で、鋭い読みを武器としたディフェンスも持ち味の1つ。在籍12シーズン目を迎えた今季も、攻守にわたってチームを支えた。
[川崎ブレイブサンダース公式サイト]
https://kawasaki-bravethunders.com/
(青木 美帆 / Miho Aoki)