「由伸2世」涙なき引退 プロの夢叶わず、野球人生に「後悔はない」と言えた理由
プロ野球ドラフト会議は25日、都内で行われ、慶大時代に「由伸2世」と呼ばれた四国独立リーグ・徳島の谷田成吾外野手は指名されず。野球を引退することを表明した。104人がプロ入り切符を掴んだ裏で、高校、大学、社会人とすべてのカテゴリーで日本代表に選ばれた25歳のスラッガーは夢叶わず。静かにユニホームを脱ぐことを決めた。
ドラフト3度目の指名漏れ、25歳で野球人生に区切り「野球はこれで終わり」
プロ野球ドラフト会議は25日、都内で行われ、慶大時代に「由伸2世」と呼ばれた四国独立リーグ・徳島の谷田成吾外野手は指名されず、野球を引退することを表明した。104人がプロ入り切符を掴んだ裏で、高校、大学、社会人とすべてのカテゴリーで日本代表に選ばれた25歳のスラッガーは夢叶わず。静かにユニホームを脱ぐことを決めた。
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「ソフトバンク、選択終了」――。午後7時58分。これが「由伸2世」にとって野球と別れを告げるアナウンスになった。育成ドラフト。スーツを着て、その瞬間を待ったが、最後まで「谷田成吾」の名前は呼ばれず。104人の未来のプロ野球選手が誕生した裏で、高校時代から長年、ドラフト候補と言われ続けた男が、その肩書を下ろすことになった。
「野球はこれで終わり。残念な気持ちはあるけど、そう決めていたので。後悔はないです」。涙はない。意外なほど明るく、潔く言った。そう言えた理由は、25歳が歩んだ足跡にあった。
オンリーワンの野球人生だった。76本塁打を放った慶応高時代、同じ「KEIO」を胸につけた慶大の先輩・高橋由伸(前巨人監督)になぞらえ、「由伸2世」の名がついた。以来、ドラフト候補として常に注目を浴び、アマ野球人生を歩んだ。慶大時代は東京六大学通算15本塁打を放ち、上位指名確実と言われながら、まさかの指名漏れを味わった。
指名解禁となる2年後のプロ入りを目指し、社会人野球の名門・JX-ENEOS入り。高校、大学に続き、社会人の日本代表に選ばれ、4番も打った。しかし、勝負の2年目にスランプに陥り、昨年も指名されず。25歳となる今年。「年齢を考えても今年、指名されなければ野球は辞める」と決めた。そして、3月、一世一代の決断を下した。
心意気を知った米大リーグの関係者からトライアウトの誘いを受け、挑戦。正社員待遇だった社会人を退社した。迷惑もかける。不安もある。批判は覚悟していた。でも「目の前にチャンスが転がっている以上、どんなリスクを背負ってでも挑戦しない理由がなかった」。恥を忍んで自費で足りない分はクラウドファンディングで資金を募った。