「人生は唯一無二のストーリー」 W杯で吉田麻也と国歌斉唱、車いすの大学生・持田温紀が描く夢
一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)が3月に都内で開催した「UNIVAS AWARDS 2023-24」では、全13部門で学生アスリートや指導者、団体が表彰された。会場には著しい成果をあげた選手や大学スポーツの発展に貢献した受賞者が多く集まったが、この華やかな舞台に2年連続で、しかも異なる部門でノミネートされたのが中央大学4年の持田温紀さんだ。
「中央大サッカー部×パラダンススポーツ選手」持田温紀さんインタビュー後編
一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)が3月に都内で開催した「UNIVAS AWARDS 2023-24」では、全13部門で学生アスリートや指導者、団体が表彰された。会場には著しい成果をあげた選手や大学スポーツの発展に貢献した受賞者が多く集まったが、この華やかな舞台に2年連続で、しかも異なる部門でノミネートされたのが中央大学4年の持田温紀さんだ。
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高校1年生の時、自転車事故により脊髄を損傷し車いす生活に。4歳の頃から熱中していた大好きなサッカーができなくなり落ち込む時期もあったが、大学進学後、様々な縁もあって中大サッカー部に入部。チームを支える営業担当として創部以来初のユニフォームスポンサー獲得などの活動が評価され、昨年度のUNIVAS AWARDSで「サポーティングスタッフ・オブ・ザ・イヤー」最優秀賞に輝いた。
全力で大学生活を走り続けてきた持田さんは、昨年3月から今度は“選手”としての挑戦を開始。「パラダンススポーツ」男子フリースタイルの競技を始めると、昨年8月に東京・代々木で行われた国際大会で見事8位入賞を果たし、同11月にイタリア・ジェノバで開催された世界選手権への出場を決めた。後編では日本代表として世界最高峰の大会に初めて臨んで見えたもの、そして様々な奇跡のような体験を通じて「人生は唯一無二のストーリー」であることを実感するなか、今、思い描く自身の将来像を明かした。(取材・文=THE ANSWER編集部・谷沢 直也)
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2023年11月21日、UAEのドバイ国際空港に降り立った持田さんは運命めいたものを感じていた。1年前の同じ日、この空港で飛行機を乗り継いで向かった先はカタールの首都ドーハ。サッカーのワールドカップ(W杯)現地観戦を前に、胸が高鳴っていた1年前の記憶が鮮明に蘇ってくる。
そして今回はパラダンススポーツの日本代表選手として、ドバイ国際空港を経由して世界選手権の開催地であるイタリア・ジェノバへ向かう。
大会に向けて、持田さんは1人の恩人からメッセージをもらっていた。送り主は、サッカー日本代表の吉田麻也(現・LAギャラクシー)だ。
2022年カタールW杯は、持田さんにとってまさに奇跡の連続だった。グループリーグ第2戦コスタリカ戦の試合前にスタンドでFIFAのスタッフから声をかけられると、選手入場と国歌斉唱セレモニーをピッチ上のタッチライン脇から見ることができた。さらに第3戦のスペイン戦では、日本代表の選手と一緒に入場してピッチ内で整列。君が代が流れる直前、吉田から「一緒に歌おう」と耳元で声をかけられ、肩を組んで国歌斉唱をした姿は、当時大きな話題となった。
人生で最高の瞬間を与えてくれた日本代表キャプテンに、直接感謝の言葉を伝えたい――。W杯後、そう語っていた持田さんだったが、対面ではないものの、その願いはすでに叶えていた。
「Jリーグの方がワールドカップの出来事を綴った僕のnoteを読んでくださって、昨年のJ30ベストアウォーズにご招待いただいたのをきっかけに、村井さんにもお繋ぎいただき、村井さんがいろいろな記事を読んでくださって、昨年6月に食事に誘っていただいたんです。そうしたら、その席上で村井さんが『せっかくだから麻也と繋ごう』と、その場でLINEのビデオ通話をしてくれて……。でも僕はすごく興奮してしまい、緊張しすぎて『ありがとうございます』くらいしか言えなかったんですけどね(笑)」
そして昨年11月、持田さんが出場権を獲得したパラダンススポーツ世界選手権の開催地は、奇しくも吉田が2020年から2年半在籍したサンプドリアの本拠地ジェノバ。大会前、村井さんがそうした近況を吉田に伝えると、「どんな競技であっても、日本代表として戦えるのは何よりも素晴らしい仕事。楽しんでください」というメッセージが届いた。