衝撃受けた箱根駅伝で再確認 早大・菖蒲敦司、陸上人生を懸けて追う同学年“最強ランナー”の背中
箱根駅伝の熱量に圧倒「こんなに人が集まる大会があるのかと…」
そして大学4年間の陸上競技生活を振り返る上では、駅伝シーズンの走りも印象深い。全日本大学駅伝に1年時から4年連続で出走した一方、箱根駅伝は負傷もあり、3年時の第99回大会が初出場となった。
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もともと箱根駅伝に「特別な思い入れはなかった」菖蒲だが、「やっぱり1回出てみると、考えられないほどの人の数というか。沿道の歓声も何を言っているのか分からないくらい、ぐわーっと来て。陸上競技でこんなに人が集まる大会があるのか、本当に凄いなと思いました」と、その熱量に圧倒された。
大学3年、4年と2年連続で出場した箱根駅伝は、ともに9区を走り区間9位と11位。「2年目は活躍したいなと思って準備したのですが、あまり上手くいかなくて。でも2回走らせてもらって、本当になんて言うんですかね……。これから陸上競技を続けていく上で、ここがゴールじゃないんだぞというのを再確認できましたし、こんなにも多くの方々に見ていただけるのだから、さらに頑張らなくてはいけないなという思いにもなりました」と、駅伝チームの一員として箱根路を駆け抜けることができた経験に感謝する。
「(駅伝監督の)花田(勝彦)さんは自身がオリンピックに2度出られているので、その経験を語っていただけるだけでも僕自身にとってすごく貴重な話でしたし、実業団の監督もやられていたので『今日やった練習は、あの選手はできていなかったよ』とか言われると自信にもなりました。花田さんには本当に、競技面で伸ばしていただいたと感じています」
早稲田での4年間を糧に、卒業後は花王陸上競技部に入部予定だ。「今年のパリオリンピック、次のロサンゼルスオリンピックは3000メートル障害で狙わせてくださいという話はしています」というが、自らの立ち位置は冷静に把握している。
高い壁となっているのが、同学年の三浦龍司(順天堂大→SUBARU)だ。男子3000メートル障害の日本記録保持者(8分09秒91)であり、2021年東京五輪では同種目で日本人初となる7位入賞。「近い存在にああいう選手がいるのはすごく嬉しいこと」と語る菖蒲は、「彼に追いついたら、僕の最大の目標が達成できる。コツコツ、コツコツ練習していって、いつかその領域まで到達できたらなと思っています」と、“世界”を狙う1つの基準点として見据えている。
「(2028年の)ロサンゼルスオリンピックには確実に出て、決勝に進んで戦いたい」
主体性を持ちながら「自分で考えてやらないといけなかった」早稲田大競走部での4年間は、菖蒲をランナーとして確実に一段階上のレベルへ押し上げただろう。この経験をいかに競争の激しい実業団で生かし、さらなる高みへ到達できるのか。
「コロナで始まった学生生活でしたが、本当にいろいろな方々に恵まれ、想像以上の支援をいただき、楽しい4年間を過ごすことができました」と晴れやかな表情を浮かべた早大109代目駅伝主将の、新たな挑戦が始まった。
(THE ANSWER編集部・谷沢 直也 / Naoya Tanizawa)