阪神2軍で起きていた「走り革命」 若虎はいかに「163盗塁」の新記録を生んだのか
島田、江越、熊谷のポテンシャルをどう伸ばしたのか
「もっと速くなると感じた理由は、野球選手もサッカー選手も筋発揮能力は陸上選手以上に優れている選手がたくさんいます。その分、力任せに走っても速い選手が多い印象でした。適切な動作の改善で人は速くなると思っているので、そこに技術が加われば、より速くより効率良く走れると感じました。球団の配慮で新人の選手たちには座学を入れてもらっているので、頭で理解してもらってから身体を動かしていくという流れも良かったです」
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ポテンシャルだけで速いのは、伸びしろの裏返し。技術を加え、2人を着実に成長させた。それでも「まだまだ行ける余地がある。走りだけを見たら、20個~25個でとどまるレベルじゃない」と舌を巻く。一方で4年目を迎えた江越については、安定した技術習得に心血を注いだ。
「もともと速かったのはありますが、課題は期間が空くとフォームが戻ってしまうこと。力任せのパワーで行ってしまうところがあるので、そこをコントロールして、技術に寄せていくことは意識して指導しました。怪我を注意しなければいけない走り方でもあるので、そこも注意しながら。いいフォームになった時は本当に速いです」
こうした指導の成果が結実し、ウエスタンリーグ新記録の礎を築いた。ただ、秋本氏にとっての願いは自身が手掛けるスプリント指導のプロ組織「0.01 SPRINT PROJECT」の理念にもあるように、走りによる自信獲得で選手が成長していくこと。そのために自身も“指導の進化”を日々模索している。
「今回、僕が走りを指導したから盗塁数が増えたとは思いませんが、その一因に少なからず関われたことは嬉しいです。『秋本が関わったから、この部分が確実に伸びた』と球団もデータとして出せるような明確な指導結果を出したいということを軸に置いています。選手はもちろん、球団として成果として認められるように、これからも指導していきたいと思います」
(THE ANSWER編集部)