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賛否ある有料スポーツ視聴の意義と未来 カタールW杯とWBCは「パラダイムシフトくらいの変化」

スポーツの価値は「筋書きのないドラマ」にあると語る藤田氏【写真:松橋晶子】
スポーツの価値は「筋書きのないドラマ」にあると語る藤田氏【写真:松橋晶子】

ABEMAとDAZNが見据える未来「日本のスポーツはまだまだ未開拓」

――今回リリースされた「ABEMA de DAZN」ではスポーツの好きになってもらうきっかけが大切というお話をされましたが、ただスポーツ界にはライトなファン、いわゆる“にわか”の存在を嫌う層があり、業界全体の発展を考える上では悩ましさもあります。

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藤田「それは頭が痛い問題ですね。もちろんコアファンは昔から好きで、応援しているが、にわかファンを排除しようとする人もいる。仲良くやって欲しいと思います」

笹本「本当にそうですね。でも、どちらかと僕自身がにわかに近いのかなと思っているんです。例えば、(サッカー・プレミアリーグの)マンチェスター・ユナイテッドのファンではないのですが、あの赤いシャツがカッコいいと思って買ったら、熱狂的なマンUのファンの方にあの選手がどうのこうのと声をかけられて困った経験があります。でも、ファッションとスポーツの親和性、音楽とスポーツの親和性、いろんなスポーツの親和性があるので、自分が応援しているチームのユニフォームを着てくれている人が増えていくことがそのチームが盛り上がっている象徴だと感じてもらえると、より良い環境になっていくんじゃないかなと思いますね」

――最後に。ABEMAやDAZNが今後のスポーツの視聴体験をどんどんとさらに変えていくと思いますが、その未来をどんな風に考えているのでしょうか。

藤田「今、人気スポーツを中心に見られているところから、収益の幅も広がることによって、いろんなジャンルのスポーツが収入を得て、人気になり、その業界の発展につながっていく、という循環ができてくると思います。ネットは編成の尺にとらわれず、放送時間を気にせず配信ができ、放送するジャンルの自由度も高いので、そこにファンになる人たちが増えていく。スポーツ自体の未来は明るいと感じますね」

笹本「ジャンルに相関して、スポーツには見るところから、実際に関わるところまでの体験が伴っています。例えば、私も子供の時はリトルリーグをやっていましたが、親に週末送り迎えもしてもらい、家族で参加するという教育的な側面もある。一方でプロの世界では、大谷翔平選手のように物凄い金額で契約したことで彼の価値が可視化され、可能性をすごく切り開いてくれた。教育的なところからビジネス的なところまで幅広いのが、スポーツが持っている役割。DAZNでもその一端を関わらせてもらい、こんな可能性がスポーツにあったんだということを僕らも知りたいですし、多くの方に感じていただけたらと思います。

 話は逸れるのですが、昔、アメリカの友人に『NFLのヘッドコーチ(監督)とアメリカの一番有名な大学のアメフトのヘッドコーチ(監督)の給料、どっちが高くて、いくらだと思う?』とクイズを出されたことがありました。普通に考えるとNFL監督と思ったら大間違い、大学の監督と言い、そこにビジネスの論理があります。NFLは選手に多額の給料を払っているので、(当時の金額で)監督はせいぜい1億円くらい、大学は10億円なんだ、と。学生には給料を払っておらず、せいぜい奨学金くらい。一方で、ファンベースは物凄く多いし、マーチャンダイズ(商品)は応援グッズが毎年変わるので、収益も物凄い。そのエコシステムが日本にもあるべきだと思っています。

 ABEMAさんを通して試合を見て、例えばゼルビアのファンになって試合に行ってみたいというきっかけから変わっていく。もちろん我々は視聴料をいただいている立場なので、どうこう申し上げるのは憚られますが、一つのエコシステムとして回っていくことによって業界全体が成長し、その成長がファンにまた還元されていく循環をどこかで断ち切ってはいけないと思うんです。スポーツは、まだまだ日本は未開拓なんじゃないかと思いますね」

――本日はありがとうございました。

■藤田 晋 / Susumu Fujita

 1973年5月16日生まれ。大学卒業後、人材派遣会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)を経て、1998年にサイバーエージェントを創業し、代表取締役に就任。2000年に26歳で同社の東証マザーズ上場を当時史上最年少で果たした。「ABEMA」は2016年に開局し、代表取締役に。スポーツ領域では2018年に当時J2だったFC町田ゼルビアの代表取締役社長兼CEOに就任。子会社のCygamesが開発したゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」のヒットを受け、2021年から馬主活動も始めた。

■笹本 裕 / Yu Sasamoto

 1964年9月4日生まれ。大学卒業後の1988年に人材大手リクルートに入社。2002年にエム・ティー・ヴィー・ジャパン代表取締役社長兼CEOに就任した。以降は2007年からマイクロソフト常務執行役員、2009年から同社常務執行役員、2014年からTwitter Japan代表取締役などを歴任。今年2月5日にDAZN Japan最高経営責任者(CEO)兼アジア事業開発に就任した。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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