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常識では考えられない男子ハンド監督交代劇 その裏に協会側の政変、両者の関係に記者が抱いた違和感

日本ハンドボール界を襲った突然の監督交代劇。日本協会は9日、男子代表のダグル・シグルドソン監督(50)から伝えられた辞意を受け、後任探しに着手したことを発表した。昨年10月に36年ぶりにアジア予選を突破した監督が、パリ五輪まで半年を切ったこの時期に明らかにした辞意。常識では考えられない監督交代、日本協会と監督との間に何があったのか。(前後編の後編、取材・文=荻島 弘一)

ダグル・シグルドソン監督【写真:Getty Images】
ダグル・シグルドソン監督【写真:Getty Images】

シグルドソン監督の突然の交代劇の裏で日本協会と監督の間に何が…

 日本ハンドボール界を襲った突然の監督交代劇。日本協会は9日、男子代表のダグル・シグルドソン監督(50)から伝えられた辞意を受け、後任探しに着手したことを発表した。昨年10月に36年ぶりにアジア予選を突破した監督が、パリ五輪まで半年を切ったこの時期に明らかにした辞意。常識では考えられない監督交代、日本協会と監督との間に何があったのか。(前後編の後編、取材・文=荻島 弘一)

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 日本協会の発表によれば、シグルドソン監督からメールが届いたのは3日。「日本代表監督を辞任し、他国の監督に就任したい」という意向だったという。すでに3月にパリ五輪最終予選を控えているクロアチアと交渉中だと現地で報じられている。五輪と世界選手権で3度優勝している強豪が、1月の欧州選手権で11位に終わって解任されたゴラン・ペルコヴァツ監督の後任として考えているというのだ。

 3日に辞意の連絡が入って以降、協会内には慰留を求める声もあった。パリ五輪までの時間を考えれば当然ともいえるが、その声は届かなかった。正式な契約解除はまだだが「契約に基づき適切に対応してまいります」と辞任を受け入れ、国内外から後任のリストアップもしているという。あまりに素早い対応だった。

 ハンドボール界らしい、ボタンの掛け違いだろう。日本協会がシグルドソン監督の就任を発表したのは16年11月。渡邊佳英会長、蒲生晴明副会長兼専務理事の時だった。かつて日本リーグの湧永でもプレーした世界的名将に8年という長期で日本代表の再建を託したのだが、翌年には協会トップが総入れ替えする「政変」が起きた。

 その後、前体制から引き続き強化本部長の座に残った田口隆氏が東京五輪まで全力でシグルドソン監督を支えた。五輪本番では悲願の1勝をあげたものの、昨年にはさらに協会の体制が変わり、同監督は完全に後ろ盾を失ってしまった。

 一般の社会でも、前任者や前体制下での人事や施策が差し戻されたり撤回されることは珍しくない。「決めたのは我々ではない」というわけだ。言い方は悪いが、シグルドソン監督自体が前体制(前々体制)の「負の遺産」になった。公然と「早く辞めてほしい」と話す協会関係者までいた。他の競技でも、協会の体制とともに代表監督が変わることは珍しくない。ただ、長期の契約はパリ五輪まで残っていた。

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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