「なんで捕らんかったん、なんで弾いたん…」 日本失意の夜、久保竜彦のボヤキが冬の中目黒に漏れた
「イラク、強かったね。完敗やん」
編集部に移動して見守った午後8時30分のキックオフ。
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前半5分、左サイドからのクロスをGK鈴木が弾き、こぼれたボールをイラクに押し込まれる。「あー!」と怒気をはらんだ声を上げ、柿ピーを貪っていた左手で机をバンと叩く。「(GKは)なんで捕らんかったん、なんで弾いたん。でもまだ21歳か。全然、若いやん」
前半24分になってエビス350mlを手に取り、今夜もようやく「プシュッ!」という音が編集部に響く。
しかし、日本は決め手を欠く展開。「久保、どこにパス出しとん。調子悪いんか」「浅野、今日ダメやな。どっか痛いんか」。ボヤキが進むうちに前半アディショナルタイム、左サイドを突破され、まさかの0-2。「狙っとるんよ、これ。(イラクは)強いね。こうなるとは思わんかった」
ハーフタイム。日本が決勝トーナメント1回戦で韓国と対戦する可能性があると、妙に燃え上がる。「めっちゃええやん。監督、誰なん。クリンスマン? あのクリンスマン? 優勝の仕方、知っとるけんね。あのめっちゃ点取るFWはまだおるん。フン・ソンミン? ファン・ソンミン?」。ソン・フンミンのことだ。
ただ、今夜求めるのは勝利。劣勢にも「大丈夫です!」と鼓舞するテレビ画面の川平慈英に共鳴し、「そう、大丈夫よ」と頷きながら2缶目のエビス350mlを開けた。
後半10分。クロスに飛び込んだ浅野がペナルティエリア内で倒され、PK獲得。「んあー!」と興奮して手を叩くも、VTRを見て表情が一変。「ん? これパスカットやん。PKじゃない。全然PKじゃない」。VARの結果、言葉通りに取り消され、絶好の得点チャンスは幻に。
久保が次代のセンターFWとして期待する上田らを投入し、ようやくゴールネットを揺らしたのは後半アディショナルタイム。左CKから遠藤が頭で合わせ、1点を返す。以降も猛攻する日本に「うわ…来た、来た!」と181センチの体を乗り出して見守ったが、やがて無情のホイッスルが響いた。
「イラク、強かったね。完敗やん」
試合後、実施したインタビュー。
試合前のテレビ画面からかぎ取っていたイラクの強さ、若き守護神候補GK鈴木に突き付けた課題、決定機を生かし切れなかったFWへの注文まで。3缶目のエビス350mlを飲みながら、ほかにはない視点で90分間を振り返った。
「今はこれ(判定取り消しがあるVAR)で戦うって難しいね。俺らの時代なら文句言って唾はいて(冷静になるのに)10分くらいかかって、交代させられとったもんね」
サッカー界に押し寄せる時代の変化の難しさも実感したドラゴン。
週末には、東京にも雪が降るという。花金を迎えた中目黒に消えていくビーチサンダルの足元は、心なしか、いつもより寒そうだった。
なお、インタビュー記事は近く配信する。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)