父はカメラマン、最前列で娘を撮影

　辻氏に定期的に指導を受けた。年々向上している肉体や技術に精神面の強化が追い風に。今では「まだまだ半人前ですが、少しでも丸く角が取れるように。もうそんなにイライラしてないですよ！　トゲトゲじゃなく、大人らしく。人間としても成長できるようにしています」と笑う。

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　今年5月の世界選手権で4年ぶり2度目の優勝。決勝では、パリ五輪日本代表の舟久保遥香を破った。今大会も日本のファンに最大限の感謝を持ちつつ、「こんなことを言ってはなんですが、観客はいないものだと思っています」と畳の上では勝負に集中。メンタルの安定が強さを生んだ。

　実は父トーマス・テイラーさんはカメラマン。この日も娘を収めようと、畳際の最前列を陣取った。「おめでとう」と祝福された世界女王は、「家族にメダルを見せられてとても嬉しいですし、ホッとしています」と笑みを浮かべ、父のカメラで記念撮影。海外メディアのインタビューでは、責任感を滲ませながら流暢な英語で応じた。

「子どもの頃、私はこの会場でサインを求めて走り回っていました。今は選手でサインを書く側になりました。子どもたちの夢見る存在になって、その子がここに選手として戻って来てくれたら嬉しいです」

　カナダ代表を争う最大のライバルのクリムカイトは今大会3位。出口がリードする形になった。「最終決定は来年の世界選手権の結果。今回勝てたのは大きな意味を持つ。代表権を勝ち取っても満足せず、五輪で金メダルを獲りたい」。悲願の五輪女王へ、心の安定が武器になる。