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NPB表彰に毎年疑問の声、スポーツ界の記者投票制の実情 Jリーグが“メディア主導”を脱したワケ

Jリーグは発足時から変化、サッカー界の流れは「選考する側がメディアから選手へ」

 Jリーグ以前の日本リーグは特殊だった。スポーツ新聞社が各賞を提供し、表彰していた。MVPはスポーツニッポン新聞社、ベストイレブンは報知新聞社、新人王は東京中日スポーツ、得点王とアシスト王は日刊スポーツ(選考はなし)。各社がリーグの代表者との選考委員会で決め、賞金も出した。ここでも、メディアの力は大きかった。

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 しかし、Jリーグは発足時から「メディアではなく、リーグ内で決める」とした。「クラブを持つメディアがあるから、公平な選考をするために」という理由を聞いたこともある(プロ野球も同じだけれど)。選手投票をベースにして選考委員会で決定という新しいスタイルだったが、今はイングランドのプレミアリーグなど選手投票が普通になりつつある。

 時代の流れとともに、選考方法が変わっていくのは海外の例をみても分かる。1956年スタートのバロンドールは、全世界の投票権を持つ記者が選出。フランスのサッカー専門誌「フランス・フットボール」によるものだが、世界で最も権威のある賞は記者が決めてきたのだ。対して、1991年に始まったFIFA最優秀選手は各国の監督と主将の投票などで決まる。選考する側がメディアから選手に移りつつある。

 かつては、試合の映像を手軽に見ること自体が難しかった。ファンは1日遅れでも新聞で記者の原稿を読み、試合の様子を知った。「最も試合をよく見て、公平な選考ができるのは記者」だった。今は試合視聴の機会が増え、リアルタイムで選手らの言動が分かるようになった。野球やサッカーなどでは記者以上に試合を見て、競技に精通するファンも増えた。「専門性」や「公平性」で記者の優位はなくなった。

 もちろん、ほとんどの担当記者は真摯に投票しているはずだし、そうでなければ記者の資格はない。ただ、毎年のように疑問点が出てくると、これまでの選考方法を見直す時期が来ているのかもしれないとも思う。選手間投票やファン投票が現実的でないとしたら、事前の選考委員会で候補選手をあげるだけでも違うはず。MVPやベストナインが大切だからこそ、多くの人が納得できる選考であってほしい。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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