サッカーとバスケで「長崎に誇りを」 総工費800億円の新本拠地で描く「競技の枠を超えた共存」
同じスタッフがJリーグとBリーグの試合運営を行う理由
「長崎ヴェルカは、エンターテインメントを通して地域創生をする会社です。バスケットボールによる興行は、確かにメインコンテンツではありますが、極論すると手段の1つでしかない。優先順位としては、地域創生が上。そのための舞台として国内最高峰のB1リーグがあり、その開幕戦で千葉ジェッツに勝利できたので、目標の1つが達成できたという実感はあります」
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B1開幕戦での歴史的な勝利について、そう語ってくれたのは長崎ヴェルカ取締役の田河毅宜である。地域創生の仕事がやりたくて、2019年に設立間もないリージョナルクリエーション長崎に転職。そこから新たに立ち上がったヴェルカに2021年に異動した。
それにしても注目すべきは、ヴェルカの躍進ぶり。2021-22シーズンはB3だったのが、2022-23シーズンはB2、そして2023-24シーズンからはB1である。単純比較はできないが、J3から3年でJ1に昇格する事例は、現時点では皆無。驚異的なジャンプアップを下支えしたものは何だったのだろうか。田河によれば、大きく2点あったという。
「1つは、設立時に打ち立てた5つのクラブ理念(ハード、アグレッシブ、スピーディ、イノベーティブ、トゥギャザー)を貫き続けたこと。もう1つは、リーグでも革新的なプレースタイルを確立できたこと。ウチはB3でもB2でも、選手の平均身長が最も低いけれど、得点率は1番でした。これまで、体格に依存しない戦い方に合致する選手を獲得してきましたが、実はB3から一緒にやってきたメンバーがほとんど。5人くらいは、初めてのB1なんですよ」
ヴェルカの試合を取材して、もう1つ個人的に注目したことがあった。それは、メディア受付や試合会場で、V・ファーレン長崎のスタッフの姿を何人か見かけたことだ。スポーツ推進部部長代理の外尾啓太郎も、その1人。差し出された名刺には、V・ファーレン長崎と長崎ヴェルカが併記されていたが、仕事の比重はどちらが大きいのだろう。
「今は6:4でサッカーですが、Bリーグが開幕したら5:5になりますね。ヴェルカの試合運営は担当者がいるので、観客席の様子を見ながら改善点を見つけていくのが僕の仕事になります」
外尾も転職組で、スタジアムシティの仕事に関わりたくて、2020年にジャパネットに入社。V・ファーレンのパートナー推進課、そしてタウン推進課を経て、今年7月から現職である。「スポーツ推進部」というのは、最近できた部署なのだそうだ。
「この部署ができたのは、ヴェルカとV・ファーレンの部署の効率化を図るという目的もありました。例えばホームタウンとかスクール、それから試合運営なんかは一緒のほうがいい。僕自身はサッカーをやっていましたが、バスケも好きですよ(笑)」
もちろん、競技ごとに切り分けているポジションもある。その代表例が、広報と営業だ。「それぞれブランディングがありますし、にわか仕込みの知識でお客様の前に立つのも失礼ですから」と外尾。とはいえ、それぞれコミュニケーションは密に取っているという。