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プロ入りか大学進学か 元Jリーガー澤登正朗の境界線、進路に悩むユース選手に伝える言葉とは

大学は「人として成長するには最高の場」

 ユースで芽が出る選手は、登録してトップチームの試合に出ることも可能だ。そういう子供は、そのままプロに向かうケースが多いが、一方でプロか大学進学かで迷う選手も出てくる。最近は三笘薫(ブライトン)ら代表で活躍する選手の多くが大卒で、大学でプレーすることのメリットが語られることが増えているため、大学志望者は10年前よりも明らかに増している。

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「僕が思うトップに上がるために必要な要素は、人間性、技術、フィジカルの3つです。この3つの軸がしっかりしていない選手については、『プロは無理だな』とはっきり言います。合格ラインギリギリで、まだプロのレベルではない。でも、チャレンジしてプロに行くか、大学に行くかで迷っている選手には、大学進学を勧めています」

 大学4年間は、プロになるためのモラトリアムという考えだ。

「大学に行けば多くの人と出会い、話をして、いろんな学びがある。人として成長するには最高の場だと思うんです。また、卒業してプロになりたいという子は、そうなるためにどうすべきか、逆算して準備していけるんですよ。大学は甘い誘惑が多いというか、遊ぼうと思えばいくらでも遊べる。でも、自分を律して厳しくやることもできる。学業をしっかりとこなしながら、プロになるためのプランを立てて生活し、そこで成長していける子だけがプロになれます。その環境があるのが大学なので、悩んでいる子には大学を勧めています」

 大学への進学を勧めても、もちろん誰もが希望の大学に行けるわけではない。最近は、ユースや高校から進学してプロになるケースが増えているので、有名大学や強豪校には全国から優れた選手が集まってくる。

「大学から欲しいと言われるのがベストですけど、それはなかなか難しい。うちのユースの子も関東の大学への進学を希望している子が多いですけど、その子の能力を考えると関東は厳しい、練習参加も難しいというのは伝えますね。国立の強豪校とかは、枠が5名ぐらいしかないので、そうなるとアンダーカテゴリーの代表レベルじゃないと入れないんです。あとは、自分が入試を受けて入るしかないんですけど、なかなかそこまでの学力はないですからね。ランクを下げて練習参加で推薦枠を勝ち取るしかないんです」

 ユースにいても大学を狙うにも、競争はついて回る。もちろんプロになるということは、そういうことだが、今後も大学に進学する選手は増えていくはず。そこからプロになる選手は「サッカーで生きていく」と覚悟を決めているだけに、大きな可能性を秘めていると言えるだろう。

(佐藤 俊 / Shun Sato)

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澤登 正朗

サッカー元日本代表 
1970年1月12日生まれ、静岡県出身。東海大一高(現・東海大付属静岡翔洋高)でアデミール・サントスらと活躍し、86年度の高校選手権で初出場初優勝。東海大を経て92年に清水エスパルスに加入すると、リーグ戦35試合7得点を記録し、Jリーグ初代新人王に輝いた。その後も精度の高いキックを武器に10番を背負い、「ミスターエスパルス」として長年にわたって奮闘。99年のJ1リーグ2ndステージ優勝、2000年のアジアカップウィナーズカップ制覇などに貢献した。日本代表16試合3得点。05年の現役引退後は解説者として活躍。13年から常葉大浜松キャンパス(現・常葉大学)サッカー部を指導し、22年から清水エスパルスのユース監督を務めている。【写真:ⒸS-PULSE】

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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