コロナ禍で再認識したスポーツの力 ブレイキン界のエースがメディア出演する理由
コロナ禍を経験して再認識したスポーツが持つ力
パリオリンピックの開幕が近づくにつれ、メディアで取り上げられる機会が増えた。出場権獲得に繋がる大会を数多く控え、練習に海外遠征にと多忙な日々を送るが、可能な限りメディア取材に対応。その根底には大好きなブレイキンの魅力を少しでも多くの人に知ってもらいたいという想いがある。
「今はスケジュールの都合もあって、スクールで次世代を教えるのは物理的に難しいけれど、例えばテレビなどのメディアを通して勇気やエネルギーを与えることはできると思うんです。実際に『Shigekixさんをテレビで見て、ウチの子がブレイキンを始めたんですよ』と声を掛けてもらうこともある。いろいろなタイミングでいろいろな角度から、次世代や世の中に影響を与えられる瞬間があると思うので、今の自分のポジションだからこそできる影響の与え方は常にできたらいいなと考えています。そのチャンスを少しでも増やすには、メディアに出ることも一つの方法。限られた時間の中でも、自分の言葉や姿を多くの方に見ていただくチャンスは作っていきたいと思います」
プロになった今も小学生の頃と変わらず、ほぼ毎日練習を欠かさず続ける。「練習したいっていうピュアな気持ちは今でも変わらないです」と言って浮かべるのは満面の笑み。とにかくダンスが大好き。そして、コロナ禍を経て、ダンスは自分の人生を豊かにするものだという想いを深めた。
「コロナ禍の中で、まず生きること、健康でいることが何よりも優先されることが明確になった。同時に、人と会えない状況になって大会がなくなり、スポーツの在り方や位置づけについて一度考え直すタイミングでもあったと思います。僕自身、大会がなくなったり、練習環境がどうなるか分からなかったり、あの期間はかなり考えさせられました。生活することに精一杯の状況ではスポーツが後回しになってしまう。仕方ないのかなと思う一方、少し寂しい気持ちもあって。
ただ、コロナ禍の中で、人が“ただただ生きる”ということ以外で久しぶりに興奮したり、すげぇ生きてるなっていう気持ちになったりしたのが、やっぱり東京オリンピックだったと思うんです。日本人選手の活躍や大会自体の盛り上がりもあったけれど、コロナ禍を経験したからこそ、その特別さやスポーツにしか生み出せないエネルギーみたいなものを改めて感じる経験になったのかなって。一見あってもなくてもいいんじゃないかと思われるかもしれないけれど、人生を豊かにするという点においてスポーツの持つ影響力は大きい。やっぱり大事だなって感じられたことが、僕は嬉しかったです。プレーヤー(する人)という形に限らず、見る人やサポートする人、そのコミュニティに存在する色々な参加の仕方があると思うんですけど、やっぱりスポーツは人生に欠かせないものなんだなって」
2024年8月9日、オリンピック競技として初お目見えするブレイキンは、パリの中心部に位置するコンコルド広場が舞台となる。世界中の注目が集まる中、ブレイキンの魅力、そしてスポーツの素晴らしさをどんなダンスで表現し、発信してくれるのか。出場できるのは男女それぞれ16人ずつ。本番まであと1年弱。パリ行きのチケットは必ず掴んでみせる。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)