“アスリート・安井友梨”の矜持 全治1年を3週間で乗り越え、8連覇のステージ袖で記者が見た姿
安井の原動力「ビキニフィットネスをスポーツとして認めてもらいたい」
今でこそ華やかなビキニアスリートとして知られる安井だが、意外な過去を持っている。
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20代の頃はファッションも美容も興味なし。靴下も左右で違う、がさつな性格。唯一の趣味は食べること。体重70キロで、鏡を見ることも嫌な自称「何の取柄もないぽっちゃりOL」だった。それが、ダイエット目的に30歳で入会したトレーニングジムで人生が一変。トレーニングの魅力に取りつかれた。わずか10か月後に出場したオールジャパンで日本一に輝き、血のにじむようなトレーニングで今大会の8連覇につながった。
現在39歳の安井にとって、激動の30代。以前、インタビューした時に戦い続ける原動力をこう明かしていた。
「30代になり、勝手に限界を決めてしまっていた自分でも変われた。ボディメイクではなく、ライフメイクができるもの。ビキニフィットネスをスポーツとして認めてもらいたい。いつか認めてもらえる日が来ると信じて、笑い者になっても『それまでは絶対やめないぞ』と突っ走ってきました」
たしかに「ビキニフィットネスはスポーツなのか」と思う人がいるのも事実。
選手は同時にステージに立つが、採点による個人競技。だから、極限まで追い込む互いをリスペクトし、すぐにトレーニングを愛する者同士、輪ができる。そして、年齢を選ばない。会場内ではそこかしこで記念撮影し、健闘を称え合う姿が見られた。
本来、スポーツとは時間や場所を選ばず、誰でも楽しみ、成長を実感できるもの。安井はビキニフィットネスを通して「人生最高の瞬間は、未来にしかない」という価値観を養った。これまで多くの競技を取材してきたが、とてもスポーツの本質的な魅力が体現された競技であると感じた。
これから、安井は初出場した際に「(日本人は)DNAレベルで5000年かかっても無理」と言われた世界選手権で、悲願の世界一を目指す。
「今回、怪我で失うことは多かったけど、できなくなって改めてトレーニングや競技が大好きなんだと思えて、私が世界一になるために足りなかったことを神様が教えてくれた気がする3週間。完治は難しくても、サポートしていただいた皆さんに唯一できる恩返しは世界一になることだけです」
どんな困難でも前だけを見て、歩んできたアスリート・安井友梨の後ろには、このスポーツのたしかな未来が見えた。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)